【9月27日 AFP】ニュージーランドのラグビーチーム、ウェリントン・ライオンズ(Wellington Lions)に所属する若手有望株のロシ・フィリッポ(Losi Filipo)が、昨年同国の首都ウェリントン(Wellington)の通りで女性2人を含む4人に対して激しく暴行を加えた事件で、同国ラグビー協会(NZRU)が同選手を擁護したことで大きな批判を浴びている。

 フィリッポは事件の裁判で、キャリアを台無しにさせたくないとする裁判官の判断により有罪判決を免れた。これを受けて熱狂的なラグビー大国であるニュージーランドの司法に対し、スポーツ選手を特別扱いしていると非難の声が殺到した。

 事件の被害者の一人となった18歳の女性は、国内テレビ局の「TV3」に対して、「もし犯人が別の人間だったら、私たち4人を攻撃し、そのうち2人の女性を殴るような行為が許されることはなかったでしょう」と語った。

 先月にも、スーパーラグビー(Super Rugby)に参戦するワイカト・チーフス(Waikato Chiefs)の選手が起こした性的暴行事件への対処で批判を集めたNZRUは、女性を軽視する行為は許容できないとコメントした。

 しかし、フィリッポが無罪となったことを受け、NZRUはこれ以上のコメントはしないという立場を示し、スティーブ・チュー(Steve Tew)最高経営責任者(CEO)は27日、「われわれは、ロシのような若者たちがラグビーとともに人生を歩むべきだと確信している」と声明で述べ、同選手を擁護する姿勢を取っている。

「ラグビーはポジティブな環境を与えるものであり、選手が現役生活の間だけでなく引退後も遭遇する可能性のある試練に立ち向かうための手助けをするものである」

 今回の裁判でフィリッポの弁護士は、ウェリントン中心部で同選手が自身の兄弟とともに被害者に一方的な暴力をふるったという事実について、異議を唱えなかった。現在18歳のフィリッポはうつ伏せに倒れた被害者の男性のうち一人の頭を踏みつけるなどして、全治8か月の重傷を負わせただけでなく、18歳の女性に対しては整形手術が必要になるほど殴り、もう一人の女性には喉元にパンチを食らわせた。 

 判決を下した判事は、このような悪質な暴力事件は通常であれば禁錮18月が妥当であるものの、有罪になればフィリッポのプロ選手としてのキャリアが妨げられることになるとして、「裁判所は人々のキャリアを台無しするのが本来の仕事かと、私は自分自身に問いかける必要があった」と述べた。

 オールブラックス(All Blacks、ニュージーランド代表)の選手はこれまでも、家庭内暴力を行ったジュリアン・サベア(Julian Savea)や、暴行事件を起こしたジョージ・モアラ(George Moala)らが有罪を免れている。

 ジョン・キー(John Key)首相はフィリッポの事件について特にコメントしなかった一方で、司法ではスポーツ選手も一般人と平等に扱うべきだと強調し、「暴力はどこであろうとも容認できないし、どんな職業であろうとも関係ない。暴力をはたらいたのであれば、ほかの人間と同様の法律が適用されるべきだ」と報道陣に述べた。

 今回の一連の判断に対しては、世間からの反発の声が高まり、フィリッポと同選手が所属するライオンズは27日、双方が同意した形で契約を打ち切ることが決まったと発表している。(c)AFP