■法案で代理母禁止の動きも

 インド全土に約2000件ある代理出産クリニック。先端技術と熟練した医師がそろい、代理母の供給も常に安定していながら料金は2~3万ドル(200万~300万円)で欧米諸国と比較すると破格の安さだ。

 しかし、インドのスシュマ・スワラジ(Sushma Swaraj)外相は代理出産サービスが悪用されていると指摘し、女性保護を目指した法案を提出。「子どものいないカップルの多くが、貧しい女性の子宮を悪用している。代理出産で女児や障害がある子どもが生まれると子どもを放棄する例もあり、大きな懸念材料だ」と話した。

 新法案はまだ議会承認を必要とする段階だが、子どもを切望するカップルたちからは抗議の声があがっている。同時に、女性の体を「貸し出す」ことへの倫理性をめぐり、インド全土に激論を巻き起こしている。

 インド最大の代理出産の中心地となったグジャラート州アナンド(Anand)市にある私立病院で不妊治療を専門とするナヤナ・パテル(Nayana Patel)医師はAFPの取材に、代理出産を規制する代わりに全面禁止にするのは危険だと語った。「何であれ完全に禁止すると地下に潜ってしまい、むしろ状況は悪化する」

 さらにパテル医師は、代理出産の禁止は貧しい女性たちが経済的に生活を向上させる、またとない一生涯の機会を否定することになると批判する。「女性たちは道徳に反することをしているわけではない。彼女たちがしているのは家庭を壊すのではなく築くことだ。そうした尊い仕事をしている女性たちに対して、私たちは『あなたたちは子宮を売っている』と非難している」

■貧しい女性たちの「人助け」

 代理母たちの宿泊施設で、マックワンさんは十分に休養をとっている。安全に出産できるよう食事や健康状態も管理されている。故郷から離れているので、地元の人たちから代理母になったと非難されることもない。児童養護施設に預けている息子たちのことは心配だが、インド人夫婦のために双子を出産する決断は正しかったと思っている。「飲んだくれだった夫は、2人目の息子が生まれる前に自殺した。夫の親戚に追い出されて頼る人は誰もいなかった」と話すマックワンさん。普段は雑用をしてわずかな金銭を稼いでいるという。

 新法案は、代理出産という選択肢が認められるのは夫、妻ともにインド人の夫婦のみ。その場合も代理母になれるのは、その夫婦の親族で、かつ無報酬という条件がつく。

 マックワンさんと同じ施設に滞在するジャグルティ・ボイさん(26)ら代理母女性たちは「豪華なオフィスでいすに座った大臣たちが、たやすく私たち貧しい人間のことを決めている」と批判する。それでもボイさんは言う。「私たちがしていることは私たちの家族、そして自らの子どもを欲しがっている姉妹たちの助けになっているのだと、私たちは心で理解しているんです」(c)AFP