米大統領選、「究極の選択」でトランプ氏を選ぶ人たち
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【9月26日 AFP】米大統領選の本選が11月に迫るなか、民主党候補ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏が大統領にふさわしいのは明らかだとみる有権者は少なくない。共和党候補ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏よりもヒラリー氏は確実に政治経験を積んでいるからだ。
だが、かつての主要産業だった製造業や重工業が衰退した地域「ラストベルト(Rust Belt、さびの帯)」のペンシルベニア(Pennsylvania)州とオハイオ(Ohio)州を訪れると、そうした論理は通じないとすぐにわかる。
「ほかの人たちと同様に、私もトランプ氏に懸念を抱いている」と、過去の大統領選で2度ビル・クリントン(Bill Clinton)氏に投票したという弁護士のアレックス・モートンさん(67)は語る。
ならば当然、今回はヒラリー氏に投票するのではと尋ねると「それはノーだ」とモートンさんは答えた。家族に対する価値観が重要だと分かったのだという。
「彼女が誠実な女性だったら、夫(ビル・クリントン氏)が女たらしな男だと分かったときに別れていたはずだ」とモートンさんはいう。「あの時、彼女が夫と別れていたら、私は彼女をもっと尊敬していたと思う。でも彼女はそうしなかった。つまり彼女は根本的に不誠実な人間ということだ」
■どちらが大統領でも「面倒なことに」
オハイオ州アクロン(Akron)に近い小さな町バーバートン(Barberton)は11月8日の本選で勝敗を左右する鍵となる地域だ。
この町に住むアーティストで銃を携帯しているアラン・バックリーさん(66)は「どちらが大統領になろうが、どうでもいい」という。バックリーさんのパートナーで障害があり無職のパメラ・ミグナノさん(61)もバックリーさんに同意し「どちらが(大統領に)なっても面倒なことになるのは変わりない」と付け加えた。
こうしたヒラリー氏とトランプ氏の両候補を否定する声は、世論調査にも如実に表れている。米国人の半数以上が両氏を否定的に見ているのだ。そうした声はとりわけ住民の多くが経済的に厳しい状況にあるラストベルトで顕著だ。
農村地域が多く保守的なオハイオ南部で大統領候補としてトランプ氏をどう思うかと尋ねてみたところ、多くの共和党支持者が肩をすくめた。
ゴルフコースで料理人として働くトレーシー・ピアソンさん(61)は「もう少し品がないとね。うちの夫があんな言動をとったらひっぱたいてるわ」と、トランプ氏の傲慢な選挙運動に苦言を呈した。その上でピアソンさんは「どっちの方向へ行こうと私たちが失うものは何もないわね」と付け加えた。
■徹底した「反ヒラリー」の町
オハイオ州のこの地域の住民は似通った人ばかりだ。みな白人で、自宅の芝生は手入れが行き届いている。大半の家が米国旗を掲揚し、小石が敷き詰められた車寄せに駐車しているのはたいていがSUV(スポーツ用多目的車)か軽トラックだ。庭にトランプ氏を支持するサインが見える家もあるが、クリントン氏を支持するサインはこの町にはない。
建設作業員の職を引退して今は犬と暮らすドン・クレップスさんはこの町でトランプ氏支持を表明している一人だ。これまでクレップスさんは、自身は常に民主党支持者だと思ってきた。だが今は無党派だと考えている。クレップスさんの家での取材中、後ろのテレビには保守系の人たちがチャンネルを合わせるFOXニュース(Fox News)がつけっ放しになっていた。
クレップスさんが今年になって支持を変えたのはなぜなのか。犯罪が多すぎること、そして多すぎる移民が米国にやって来て「罪のないの人たちを殺している」からだと彼は言う。隣町のキャロルトン(Carrollton)で今年に入ってから発生した犯罪は数えるほどだが、クレップスさんはそうした統計を信じようとはしない。
ラストベルトでは、どの町を訪れても話は同じだ。住民は容赦なくヒラリー氏を批判する。
かつては民主党の牙城だったペンシルベニア州ジョンズタウン(Johnstown)に住むミラン・ダビチさん(66)は2人の大統領候補について、「1人はペテン師、もう1人はうぬぼれ屋だ」と語る。それでもダビチさんはトランプ氏に投票することに決めている。(c)AFP/Ivan Couronne