【9月22日 AFP】温室効果ガスの削減に向けた新たな国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」からの米国の脱退を公約した米大統領選の共和党候補、ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏を非難する書簡が公開され、これまでに世界各地の科学者400人近くが署名した。書簡は、同氏が当選すれば環境に深刻な影響を及ぼしかねないと警鐘を鳴らしている。

 20日にウェブサイト「responsiblescientists.org」に投稿された公開書簡は「(パリ協定から離脱する)『パリグジット』が現実のものとなれば、人間が引き起こす気候変動という地球規模の問題に米国は留意しないという明確なメッセージを送ることになる」と指摘。「この世界的な枠組みから脱退すれば、地球の気候にとっても米国の国際的な信頼にとっても、長期にわたって厳しい結果がもたらされるだろう」と警告している。

 書簡には既に世界中の科学者375人の署名が集まっており、世界的に有名な英宇宙物理学者スティーブン・ホーキング(Stephen Hawking)氏や、ノーベル物理学賞の受賞者でもあるスティーブン・チュー(Steven Chu)前米エネルギー長官らも名を連ねている。

 トランプ氏は、米科学誌サイエンス(Science)の出版人から気候変動について見解を問われた際、この分野では「調査すべきことがたくさんある」と述べるにとどめ、代わりに浄水計画や食料増産、マラリアなどの病気撲滅のために資金を拠出する可能性に言及した。

 一方、民主党候補のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)前国務長官は「科学は非常に明白だ。気候変動は差し迫った脅威であり、われわれの時代に取り組むべき課題だ。その影響はすでに世界中の家庭で感じられている」と答えている。

 2015年に仏パリ(Paris)で開催された国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第21回締約国会議(COP21)では、出席した約190か国の首脳らが気候変動は危機であり、解決する必要があるとの認識で一致している。(c)AFP