医療情報が流出したナダルとファラー「隠し事はしていない」
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【9月20日AFP】ハッカー集団が世界反ドーピング機関(WADA)のシステムに不正アクセスを行った問題で19日、新たに26人の選手の情報が流出し、これらに含まれていた男子テニスのラファエル・ナダル(Rafael Nadal、スペイン)と英陸上選手のモハメド・ファラー(Mohammed Farah)は、隠し事は何もしていないと強調した。
ファンシー・ベアーズ(Fancy Bears)などの名で知られるハッカー集団が、WADAのシステムに不正アクセスした問題では、リオデジャネイロ五輪に出場した英国代表選手17人を含む世界各国のアスリート60人の医療データが盗まれたが、そのほとんどは、持病や体調不良を理由に本来は禁止されている薬が必要な場合に限り適用される特例措置(Therapeutic Use Exemption、TUE)が認められているものだった。
今回のデータ流出では、スペインテニス界のエースであるナダルと、五輪の陸上中長距離で計4個の金メダルを獲得しているファラーが、過去にTUEを利用してWADAの禁止薬物に指定されている物質の接種していた情報が含まれていたが、これまでハッキングの被害に遭ったスポーツ界のビッグネームらについて、不正行為が明るみに出た事例はない。
四大大会(グランドスラム)通算14勝を誇るナダルは、スペインメディアに対し、「治療目的の服用許可を申請し、それが認められれば、禁止行為には当たらない」とすると、「けがの程度はニュースになるようなものではなく、ただの炎症にすぎない」と説明した。
これまで2度にわたりTUEを利用しているナダルは、運動能力を向上させるような薬を使用したことはないものの、医師のアドバイスで故障に悩まされている膝の治療に最適とされた物質を摂取したことは認めた。
ロシア人とみられるハッカー集団によって自身の医療記録が流出したことについて、ナダルは「薬物検査の実施がすべて公表され、その2週間後に結果が判明すれば、スポーツ選手をはじめ観客やメディアにとって有益なことだ」として、批判するどころか、すべての医療記録が公表されることを支持している。
「こうすれば問題はなくなる。スポーツ界は一歩前に進み、完全な透明性を目指すべきだ。僕は以前からそれを訴えてきた」
■「隠し事はない」
現在33歳のファラーは、2008年から2度にわたりTUEを利用している。その際には、自転車ロードレースの最高峰ツール・ド・フランス(Tour de France)を制覇した実績を持つ五輪金メダリストのブラッドリー・ウィギンス(Bradley Wiggins)が使用したものと同じステロイドの一種、トリアムシノロン(triamcinolone)の処方を受けている。
さらに2014年には、標高の高い米ユタ(Utah)州パークシティー(Park City)での練習中に転倒した際に、生理的食塩水の点滴と2本の痛み止めを摂取する例外措置を受けた。
昨年6月、米反ドーピング機関(USADA)の捜査対象となっているコーチのアルベルト・サラザール(Alberto Salazar)氏について質問されたファラーは、2014年にTUEを初めて利用したとしていたが、その数週間後には英スカイ・スポーツ・ニュース(Sky Sports News)に対し、2008年にトリアムシノロンを使用した事実を認めている。
ファラーの広報担当者は、「モー(ファラー)が以前話した通り、彼に隠し事はありません。今回流出した(医療)情報についても、昨年英紙サンデー・タイムズ(Sunday Times)に対して自発的に公開した血液データの事実に基づくもので、何ら問題はありません」とコメント。
「モーの医療行為は英国陸上競技連盟(UKA)の監視下にあり、TUEを利用したのは彼の長いキャリアで2度だけです」
(c)AFP/Julian GUYER