【9月20日 AFP】考古学者チームは、古代から現存する最も複雑な技術工芸品の一部である「アンティキティラ島の機械(Antikythera Mechanism)」が見つかったのと同じ地中海(Mediterranean Sea)の沈没船で、2000年前の人骨を発見した。英科学誌ネイチャー(Nature)が19日、伝えた。

 ネイチャーによると、ギリシャ・アンティキティラ(Antikythera)島の沖合で8月31日に発見されたこの人骨からDNAを抽出できれば、人骨の身元に関する手掛かりが明らかになる可能性があるという。

 また、頭蓋骨の一部、腕の骨2個、肋骨数個、大腿骨2個を含む、驚くほど保存状態の良いこれらの人骨により、嵐に遭遇して沈没したと思われるこの有名な紀元前1世紀の商船に関する謎を解明できるかもしれない。DNA検査については、ギリシャ政府の許可はまだ下りていない。

 今回の人骨は、非常に珍しい発見だ。沈没船の犠牲者の遺体は通常、海に流されるか魚に食べられてしまうため、数十年、ましてや数百年の間、残存していることは非常にまれだ。

 米ウッズホール海洋研究所(WHOI)の水中考古学者で、発掘調査の共同責任者のブレンダン・フォーリー(Brendan Foley)氏は「今回と同様のケースは、他に知られていない」とネイチャー誌に語っている。

 デンマーク自然史博物館(Natural History Museum of Denmark)の古代DNA分析の専門家、ハンネス・シュレーダー(Hannes Schroeder)氏によると、初期の調査から発見された人骨は若い男性のものであることが示唆されているという。「2000年前の骨のようには見えない」とシュレーダー氏はネイチャー誌に語った。

 シュレーダー氏は、耳の後ろに位置する錐体骨を回収できたことを特に喜んでいる。錐体骨には、他の部位の骨や歯よりも保存状態の良いDNAが残されている傾向があるからだ。

「これまでに分かっていることからすると、DNAが存在するならそこにあるに違いない」とシュレーダー氏はネイチャー誌に述べた。

 DNAを抽出できれば、髪や瞳の色、祖先や地理的な起源などを解明できるかもしれないと、シュレーダー氏は付け加えている。これまでに現生人類の骨から抽出された最古のDNAは、約4万5000年前のものだ。

 1900年に海綿を採取する潜水士らによって最初に発見された水深約50メートルの海底にあるこの難破船は、考古学者らによる調査の対象となった史上初の沈没船と広く考えられている。

 この難破船から見つかった、紀元前2世紀に製作された機器「アンティキティラ島の機械」は、世界最古のコンピューターと呼ばれることがある。

 約40個の青銅製の歯車からなる非常に複雑な構造を持つこの機器は、古代ギリシャ人たちが太陽系の運行周期を計算するために用いていた。同程度の機能を備えた天文時計が欧州で製作されるようになったのは、その1500年後のことだった。(c)AFP