【9月16日 AFP】人間による乱獲が空前の規模で大型海洋生物の大量絶滅を引き起こす恐れがあるとした研究論文が米科学誌サイエンス(Science)で発表された。論文は、最大級の魚が姿を消せば、その消失は他の海洋生態系にも深刻な影響を及ぼすと警告している。

 米スタンフォード大学(Stanford University)の純古生物学者で論文執筆者のジョナサン・ペイン(Jonathan Payne)氏は「今回の研究で、現代の海洋における絶滅の脅威は、体がより大型であることと非常に強く関連していると明らかになった」と話す。「これは人間が食用目的で、より大型の種を真っ先に捕獲対象としていることに起因する可能性が最も高い」

 研究チームは、軟体動物と脊椎動物の化石記録データベースを用いて、現在までの500年間と最大で4億4500万年前までさかのぼる古代とを比較し、絶滅の脅威と体の大きさなどの特徴との間にどのような関連性があるか調べた。

 論文の共同執筆者で同じくスタンフォード大のノエル・ハイム(Noel Heim)氏は「現代の海で起きていることは、過去に起きたことと全く異なる」と語った。

 生物が海で絶滅した場合、体が大型であるために絶滅リスクが増大した例は過去にはなかった。一方、最大級の海洋生物が漁獲対象とされがちな現在は、大型の海洋生物が絶滅の脅威に直面する確率が相当に高くなる。

 ペイン氏の説明によれば、体容積が10倍増えるごとに、絶滅の脅威の確率が約13倍高くなることが今回の分析で示された。「体が大きいほど、絶滅に直面する可能性は増す」という。

■最大要因は気候変動より「人間」

 研究チームは他にも、クジラやサメなどの生存を脅かす潜在要因の一つとして気候変動を調査したが、こうした脅威の最大要因ではないことが判明した。

 論文は、地球温暖化について「今回調査した生物群に関しては絶滅脅威の主な要因ではないと思われる」とし、現代の海洋生物相の主要な脅威は、むしろ人間による漁獲と狩猟であるとの見方を示した。

 地球人口が70億を超える現在、世界で消費される動物性タンパク質の17%は魚類を供給源としている。だが国連食糧農業機関(FAO)によれば、マグロやメカジキなど地球上で最大級の魚の一部は個体数が過去水準の10%を下回っている。(c)AFP/Jean-Louis SANTINI