【9月14日 AFP】リオデジャネイロ五輪の陸上男子マラソンで銀メダルを獲得したエチオピアのフェイサ・リレサ(Feyisa Lilesa)は13日、もし国際社会がエチオピア国内で続く抑圧から目を背けるようなことがあれば、同国で民族間の殺りくのような悲劇も起こり得ると警鐘を鳴らした。

 リレサは米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)の特集ページで、「私たちはみな平和を望んでいるが、政府が攻撃を続けている。もし殺人が止まらなければ、人々が自己防衛のために非暴力を放棄してしまうのではないか恐れている」と語った。

 リレサは8月に行われたリオ五輪の陸上男子マラソンで銀メダルを獲得した際、抗議の意を表明すると、メディアに大きく取り上げられた。

 頭上で腕を交差させるジェスチャーは、昨年11月から始まった自身の故郷オロミア(Oromia)州におけるエチオピア政府の政治弾圧に対する抗議を意味し、母国の反体制派の活動家や政治犯が手錠をかけられた姿を表しているとされ、リレサは「エチオピアでは、ある特定の民族出身の官僚が尊敬を受け、優れているとされるシステムで動いている」と話している。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch、HRW)は、抵抗したことで同国の治安維持勢力に殺された人の数は現在までに400人以上に及ぶと推定し、リレサも「少なくともオロミア州の私の故郷がある地区で、知り合いだった12人がその中に含まれている」としている。

 リオ五輪では、ゴールインする際と表彰式に立った時の2度にわたって頭上で腕を交差させるジェスチャーをとったリレサは、帰国すれば命の危機にさらされるだろうと語っている。エチオピア当局は、リレサに処分を下さないことを明言していたが、同国代表選手団が乗る飛行機で帰国することを避けたリレサは、米国に亡命する可能性があると報道されていた。

「走ることが私の人生だ」と話すリレサは、「エチオピアが私を代表選手としてもう一度選出することはないと思う」と語った。

「これまで何百人ものエチオピア人が、平和的な手段で不正について抗議しただけにもかかわらず、治安維持勢力によって殺されてきた。私は世界に何が起きているのかを伝えたい」

 アフリカ諸国の中で最も抑圧的だとされるエチオピアは現在、政府への抵抗運動の爆発によって生じた不穏な状況を抑え込むことに苦労している。そうした動きは国の中心であるオロミア州から北部のアムハラ(Amhara)州にまで拡大している。

 リレサは、米国政府にエチオピアから説明を要求することと同国の一連の振る舞いを非難するよう要請する意向だという。

 米ニュージャージー(New Jersey)州のクリス・スミス(Chris Smith)下院議員とコロラド(Colorado)州のマイク・コフマン(Mike Coffman)下院議員も「ムラトゥ・テショメ(Mulatu Teshome)大統領によるエチオピア政府の抑制的な活動」に不安を示し、「残念なことに節度は守られていない。どちらかといえば、エチオピア政府は抵抗勢力や市民社会における批判を抑え込む動きを強化している」と声明を出した。(c)AFP/Sébastien BLANC