【9月11日 AFP】2001年9月11日の米同時多発攻撃は、米国を永遠に変え、国内外の安全保障政策に強烈な影響を与えた。米国は過去15年間イスラム過激派との戦いから抜け出せず、中東の混乱を終わらせることもできていない。

 ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前大統領は、旅客機による自爆攻撃で約3000人が死亡したことを受けて「テロとの戦い」に乗り出した。来年1月に退任するバラク・オバマ(Barack Obama)大統領は、情勢が泥沼化したイラクやアフガニスタンからの米軍撤退を図った。

 ただ、この面でのオバマ氏の成果はまちまちであり、イラクとアフガニスタンには依然として米軍が駐留している。専門家の間では、オバマ氏は米国とイスラム世界の間の距離を縮めようと努力したものの、米国を国内外でいつ終わるとも知れないイスラム過激派との戦いの泥沼から救い出すことなく退任するとみられている。

 米首都ワシントン(Washington D.C.)にあるブルッキングス研究所(Brookings Institution)中東政策センター(Center for Middle East Policy)のタマラ・コフマン・ウィッテス(Tamara Cofman Wittes)氏は「イスラム過激派によるテロの脅威は進化している。オバマ大統領は自身の意向とは逆にイラクで再び軍事的に関与し、続いてシリアとリビアでも同じことをした」と語った。

 ウィッテス氏は世界経済フォーラム(World Economic Forum)のウェブサイトで、中東の紛争やイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の転移、インターネットによる過激思想の伝播、欧米の都市で起きた一連の攻撃により、米同時多発攻撃から15年になる今でも『世界的なテロとの戦い』の枠組みを退けるのは非常に困難だと述べている。

 米国はアフガニスタンやナイジェリア、ソマリア、イエメンでも限定的に、あるいは純粋に兵站面で軍事的に関与して多様な脅威に対処している。ワシントン・アラブ湾岸諸国研究所(Arab Gulf States Institute in Washington)のフセイン・イビシュ(Hussein Ibish)上級研究員はAFPに対し「大がかりな戦争は事態を悪化させるというのがオバマ政権の考え方だ」と述べた。

 そこでオバマ政権は無人機や特殊部隊による攻撃、現地戦闘部隊の訓練を中心とした新時代の戦いに乗り出した。米連邦議会のデータによるとイラクとアフガニスタンにおける2001~14年の米軍の死者は5300人、負傷者は5万人、戦費は1兆6000億ドル(約164兆円)に膨らんでいるが、新しい戦い方は人的・財政的コストを抑制できる。

 オバマ氏の戦略が最大の成功を収めたのは11年5月に米同時多発攻撃の首謀者で国際テロ組織「アルカイダ(Al-Qaeda)」の最高指導者だったウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者を米特殊部隊がパキスタンの住宅で殺害した時だった。

 ただイビシュ氏は、限定的な軍事的関与では不安定な情勢を変えることはできないため、戦いが続いているように見えるだけでなく、現在の混乱を解決不可能な問題として受け入れたことになると指摘した。(c)AFP/Nicolas REVISE