【10月25日 AFP】「怒ってはいけません、相手が降伏するよう仕向けなさい」──夫の浮気に気づいたワンさんが、「愛人ハンター」会社に電話したとき、こんなアドバイスをされた。

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　彼女は社会的にも経済的にも損失を被る離婚よりも、浮気相手の女性の信頼を得て関係を終わらせる専門家を雇った。

　夫の浮気は何年も続いていたが、「愛人ハンター」に依頼してから2か月もたたぬうちに、その関係は終わった。

　ワンさんは同サービスに対し、40万～50万元（約610万～770万円）を支払ったと言う。

　彼女が利用した会社「維情（Weiqing）」は全国に59のオフィスを持ち、法的助言の他、講習会も行っている。

　創業者の舒心（Shu Xin）氏によれば、舒氏が指揮するエージェントは300人。「離婚を防ぐことが目的だ」と、同氏は首都・北京（Beijing）の富裕層区域に構える事務所でAFPに語った。「私たちは毎年、約5000組の夫婦を救っている」

■コツをマスターしたハンターたち

　愛人ハンターは大半が女性であり、大学で心理学、社会学、あるいは法学を専攻した人たちばかりだ。彼らは「現場」に送られる前に、仕事の要領を覚えることに3年を費やす。現場では、相手女性の近隣住民、清掃業者、あるいはベビーシッターなどを演じる。

　リー・ミンさん（47）は、この仕事を始めて3年になる。「私は愛人たちよりも年上であることが多いため、彼女たちは私の話に耳を傾ける」と、リーさんは言う。

「愛人が公園やスーパー、仕事へ行ったときに、私は偶然彼女と出くわすようにする。彼女が家に引きこもりがちな人でも、私の部屋で水漏れが発生したなどと言って、手伝ってもらうこともできる」と、リーさん。「私たちは接触する方法をいつだって見つけ出すことができる」

「ある時は、占い師に扮（ふん）して愛人女性を占ったこともある。彼女のことについては、奥さんからすべてを聞いていたので、彼女をあぜんとさせて既婚男性との関係を終わらせるよう説得するのは簡単だった。最短で別れさせることができた案件の一つだった」

■「浮気は簡単」

　政府の統計によると中国の離婚率は2007年の1000人当たり1.59件から、2014年には同2.67件と急増している。フランスでは同1.9件、イタリアでは0.9件であり、中国の離婚率は欧州に比べて極めて高い。

　公式の統計によると、北京では2015年に7万3000組の夫婦が離婚。9年前に比べて3倍近い数だった。

　出会い系サイト「Baihe.com」の調査によると、中国では初婚同士の夫婦で、少なくとも一方が浮気している割合は5割に上るという。愛人のいる初婚の夫は21％以上、妻も20％が浮気していた。夫と妻の両方が浮気している割合は9％近かった。

「現代は特にインターネットがあるために浮気が簡単になっている」と、オンラインでカップル相談を受けている会社の経営者は言う。同氏は、米国発の出会い系アプリ「ティンダー（Tinder）」の中国版「タンタン（Tantan）」が人気を博していると指摘した。

■高級マンションや高級車

「愛人を持つ男性は世界中どこにでもいるが、とりわけ中国では、裕福な男性からマンションや高級車などを与えられ囲われている」と、維情の創業者兼社長で元ジャーナリストの舒氏は言う。「経済的困窮に陥ることを恐れて離婚したくない女性もいる。彼女たちはただ夫に愛人と別れてほしいだけだ。そんなときこそ、私たちの出番だ」

　別れさせるにはカネがかかる。愛人ハンターは多くの場合、ターゲットとなる女性と友人になるために、ターゲットの女性たちの住居と同じぐらい高額な部屋を借りて、高級な服や宝石を身につける必要がある。

「私たちは高い報酬を得ているが、多くを失うリスクも抱えている。別れさせることができなければ、依頼料の全額を返金することになるからだ」と、舒氏は言う。同氏によれば、維情は2014年、8552人の愛人に関係を終わらせた。2人以上の愛人を抱えていた男性もいたという。

　中国の法律では、維情をはじめとする「愛人ハンター」業は違法ではないと、北京で離婚を手掛けるある弁護士は言う。維情のような会社は「目的を果たしている」と、同氏は付け加えた。

　しかし、「多くの問題もある」と同氏は言う。「プライバシーの侵害や、ハンターが愛人をだまして関係を築いていることなど、人々の感情が傷つけられるリスクがある」

　前出のハンターのリーさんには、そうした問題の解決策があると言う。「愛人女性に新しい恋人を見つけてあげることがある。それが彼女を幸せにする私なりのやり方なの」

(c)AFP/Ludovic EHRET