違法銃器取締の米おとり捜査、お粗末すぎる実態判明
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【9月9日 AFP】米司法省傘下のアルコール・たばこ・銃器取締局(ATF)が米国内の複数の州で実施した違法銃器取り締まりのおとり捜査作戦のお粗末な実態が、8日に発表された報告書で明らかになった。中には、逆に容疑者を利する結果になった作戦もあったという。
米司法省の監察総監室は、2年かけてまとめた調査結果の報告書で、おとり捜査用にATFが運営していた偽装店舗には数々の問題点があったと指摘。主な原因として「運営管理の甘さ、任務に当たる捜査員の訓練・指導不足、たるんだ組織文化によって慎重を要する作戦におけるリスク管理を十分に重視しなかった点」などを挙げている。
おとり捜査では、違法に銃器を所有する者たちをおびき寄せるため、偽装店舗を設けた。不法銃器所持者の身元を特定し、彼らの銃を買うことで武器の市場流通を防ぐのが目的で、買い取った銃が使用されてきた経緯の調査も試みた。2004~13年の間に、タトゥー店やヒップホップ系衣料品店など計53店舗を設置し、違法な銃器や薬物を買い取るとうわさを流したという。
ところが2013年、米地方紙ミルウォーキー・ジャーナル・センティネル(Milwaukee Journal Sentinel)が地元で展開されていたATFの作戦に問題があると報道。おとり捜査官が特定の銃器の買い取りに必要以上の金額を支払っていたり、公的資金の乱用があったりしたと暴露した。これを受けて司法省が調査を命じていた。
ミルウォーキー・ジャーナル・センティネルによれば、違法業者がおとり捜査官に銃を売った金で新たな銃を購入し、より高値でATFの偽装店舗に売りつけていた事例もあった。また捜査官らは、現金やたばこと引き換えに、知的障害のある男性に偽装店舗の業務の宣伝をさせていたという。
報告書は、ATFが知的障害者や発達障害者を狙ってこうした役割を担わせていた証拠は見つからなかったが、司法省には障害者差別を禁止する規定がなかったと指摘している。
ミルウォーキーの偽装店舗は閉店したが、その後、侵入窃盗被害に遭い、ATFが買い取った銃器類をはじめ、おとり捜査関係者の氏名や携帯電話番号、使用車両の詳細などが記された極秘書類が盗まれている。(c)AFP