【8月31日 AFP】欧州連合(EU)がアイルランド政府に対し、米IT大手アップル(Apple)に過去最高額となる最大130億ユーロ(約1兆4900億円)の追徴課税を行うよう命じたことを受け、米政府は30日、非常に重要な米欧の経済協力関係を損なう恐れがあると警告した。

 欧州委員会(EC)は、時価総額世界一の企業であるアップルが、アイルランド政府と結んだ違法な優遇措置の取り決めにより、EU内での納税を実質全額免れていたと指摘している。

 マルグレーテ・ベステアー(Margrethe Vestager)欧州委員(競争政策担当)によると、アップルは2014年、欧州での収益に対しわずか0.005%の法人税しか支払っていなかった。これは100万ユーロ(約1億1500万円)の利益に対し、50ユーロ(約5700円)の税金しか納めていなかった計算になる。

 欧州委による追徴課税命令を受け、アップルとアイルランド政府は直ちに不服申し立ての意向を表明。さらにアップル側は、欧州での雇用減少につながる恐れがあると警告した。

 米国とEUとの間では現在、EUがグーグル(Google)やアマゾン・ドットコム(Amazon.com)、マクドナルド(McDonald's)、スターバックス(Starbucks)といった米大手企業に対する反トラスト法違反疑惑をめぐる調査に相次いで乗り出したことを受けて、緊張が高まっている。

 米政府もアップルの警告に同調し、同社への追徴課税は欧州経済に悪影響を及ぼしかねないと警鐘を鳴らした。

 ジョシュ・アーネスト(Josh Earnest)米大統領報道官は、「一方的なアプローチを懸念している」と述べ、欧州委員会の措置が「欧州との協力の下で成し遂げてきた、公正な国際税制の実現に向けた進展を阻害する恐れがある」と指摘した。

 また米財務省も、欧州委員会の判断は「外国投資や欧州のビジネス環境、さらには米国とEUとの経済パートナーシップの重要な精神を脅かす恐れがある」との見方を示した。(c)AFP