【8月21日 AFP】国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ(Thomas Bach)会長は20日、南米初開催となったリオデジャネイロ五輪について、世界の先進国でなくとも五輪を開催できる成功例の「象徴」と評価した。政治不安と経済危機を抱えているブラジルでは、五輪開催に向けて国民の無関心が懸念されていたものの、バッハ会長は大会開幕後に国中が結束したという認識を示している。

 バッハ会長は閉会式を翌日に控え、「多くの面で象徴的な五輪となった」とすると、「いろいろな競技で大会を象徴する選手が誕生している」と語った。

 リオ五輪については予算不足をはじめ、インフラや交通網のトラブル、さらにスタジアムの空席を指摘する声が上がっているが、バッハ会長はIOCが「国内総生産(GDP)の低い国でも、五輪開催は可能であることを示した」と強調。「ブラジル国民は素晴らしいホストであり、五輪の裏方として一丸となった。彼らがこの素晴らしい大会を大いに盛り上げてくれた」

 一方、大会期間中には2発の流れ弾が馬術会場に飛来したり、報道陣のバスが投石を受けたりする事件が発生するなど、リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)は暴力犯罪の街として知られ、常に安全面の不安がつきまとっている。

 窃盗事件や路上強盗なども報道されているが、バッハ会長は「それも象徴の一つであり、現実の中で五輪が行われているということだ。大会は別世界で組織されているのではない。開催地の現実を身近に感じられて非常に良いことだと考えている」とコメントした。

 さらにバッハ会長は、国家ぐるみでドーピングを隠ぺいしたことが発覚したロシアに対して、条件付きで参加を認めたIOCの決断を改めて擁護し、「アスリートの利益を考慮しての決断だ。選手個人の権利を守り、国家が行った不正行為の責任を負わせないためだ」と説明した。

 一方、ロシアの組織的なドーピングを内部告発し、身の危険を感じていると訴えているユリア・ステパノワ(Yuliya Stepanova、旧姓:リサノワ〈Rusanova〉)のリオ五輪参加を認めなかったことについては、「ミセス・ステパノワの身の危険について、われわれに責任はない」とコメントした。(c)AFP/Talek HARRIS