【8月19日 AFP】フランスで、一部自治体の首長らがイスラム教徒の女性向けの水着「ブルキニ」の海辺での着用を禁止したことをめぐり、反対派が甚大な差別だと批判するなど、国を二分するほどの論争が巻き起こっている。

 頭と体を覆うイスラム教徒の女性が着用する水着ブルキニについて、マニュエル・バルス(Manuel Valls)首相は17日、「フランス共和国の価値観とは相いれない」と発言し、論争に参戦。バルス首相の発言で、フランスにおけるイスラム教徒の立場をめぐる問題は、海辺から政治の舞台へと持ち込まれることとなった。

 バルス首相は地元紙ラ・プロバンス(La Provence)に、ブルキニは「挑発的」で治安を乱す恐れがあると語った。しかし、ブルキニの同国内での全面的な禁止については否定した。

 一方、フランスの英字紙インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ(International New York Times)は、リオデジャネイロ五輪ではアラブ諸国の女性選手が、頭を覆う水着を着用して参加しているが何の問題も起きていないと指摘。「公共の場から宗教的な衣服を排除することを重要視するフランスは、外国人の目には奇異に映ることがある」と評した。

 英紙デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)は過激主義との闘いとの口実によるブルキニ禁止は、それ自体が「狂信的で愚かな行為」だとし、「穏健なイスラム教徒たちを疎外し動揺させるだけだ」と付け加えた。

 隣国イタリアのアンジェリーノ・アルファノ(Angelino Alfano)内相は17日、移民コミュニティーの融合の必要性を訴えていたフランス人モデルの努力の失敗を嘆き、伊全国紙コリエレ・デラ・セラ(Corriere della Sera)に、ブルキニ禁止は「挑発の可能性」があり、フランスを攻撃に対して一層、脆弱(ぜいじゃく)にする可能性があると語った。

 フランスの人権団体「ヒューマンライツ・リーグ(Human Rights League)」は批判の矛先をブルキニ禁止派の市長らを支持したバルス首相に向け、「信仰を理由に、容疑者となるフランス国民に汚名を着せる動きに加わった」と同首相を非難した。

 世俗主義研究が専門の社会学者ジャン・ボベロ(Jean Bauberot)氏はブルキニ禁止を、自由と平等と友愛の祖国であるフランスで不寛容が浮遊していることの表れだとみている。ボベロ氏は仏紙リベラシオン(Liberation)に、「(イスラム教の)ヘッドスカーフやブルキニを目にしてショックを受けることもあるだろうし論争があってもいい。だが、禁止してはいけない。違いを許容し異質を受け入れるのが民主主義だ」と語っている。(c)AFP/Clare BYRNE