【8月16日 AFP】ロシアの組織的なドーピングを内部告発したユリア・ステパノワ(Yuliya Stepanova、旧姓:リサノワ〈Rusanova〉)は15日、世界反ドーピング機関(WADA)の自身の個人アカウントが何者かによってハッキングされていたことにより、身の危険を感じていると語った。

 夫のヴィターリー・ステパノフ(Vitaly Stepanov)さんとともにロシアの国家ぐるみのドーピングを告発したステパノワは、昨年にこの騒動が発覚してからは米国に身を潜めて暮らしている。

 陸上800メートルの選手であるステパノワは、電話で報道機関の取材に応じ、13日にWADAが事実を認めた自身のアカウントへのハッキングにより、身の危険に新たな懸念が生じたと話している。

 ステパノワは、「もし私たちに何かが起きた場合は、それが事故ではないということを分かっていただきたいです」と語っている。2月には、露反ドーピング機関(RUSADA)の元職員2人が、突然死している。

 リオデジャネイロ五輪に中立の立場で出場することを願っていものの、国際オリンピック委員会(IOC)によってこれを拒否されたステパノワは、今回の五輪でもドーピングはまん延していると考えている。

「五輪に参加している多くのアスリートが、準備段階で運動能力向上剤を使っていたことは間違いないと思います。ドーピングはロシアだけの問題ではありません」

 夫のステパノフさんは、リオ五輪に出場しているロシアの大多数のアスリートがドーピングについて認識しているものの、口を閉ざすことを選択したと考えている。

「今競技に出場している大部分のアスリートは、ロシアで何が起きているのか、自分たちが準備段階で何をしていたのかを知っています。これは明らかです」

「アスリート、もしくはどんな競技であっても3年以上関わったスポーツ関係の職員であれば、どこで不正が起きているのかを理解しているでしょう。彼らは同じシステムに従い、同じシステムを隠蔽(いんぺい)しているのです」

 また、ステパノフさんは、ロシアのドーピング問題を象徴する存在のユリア・エフィモワ(Yuliya Efimova)は、同国のドーピングの隠蔽に加担したとの考えを示している。エフィモワは、米国のリリー・キング(Lilly King)をはじめとした多くの選手からリオ五輪出場を批判されている。

「彼女には真実を話すチャンスがありました。しかしその代わりに彼女は、今回の騒動を冷戦(Cold War)と呼んで責任を逃れました。私の見解では、彼女は何が起きているのかを熟知しています。彼女はロシアのドーピングシステムを隠蔽しているのです」

(c)AFP