五輪惨敗の太め競泳選手、ネットで人気 母国エチオピアでは批判も
このニュースをシェア
【8月12日 AFP】リオデジャネイロ五輪で今週行われた競泳男子100メートル自由形予選に出場し、他の選手らに競泳路の半分ほどの差を付けられて最下位で敗退したぽっちゃり体形のエチオピア代表選手がインターネット上で思わぬ人気を集めた一方、母国エチオピアではコネで代表入りしたとして激しく批判されている。
腹筋の割れた他の選手たちに交じり、突き出たお腹で出場したロベル・キロス・ハブテ(Robel Kiros Habte、24)は、2000年のシドニー五輪で陸揚げされたばかりのマグロのような泳ぎを見せた「うなぎのエリック」こと赤道ギニアのエリック・ムサンバニ(Eric Moussambani)を想起させ、ソーシャルメディアで「鯨のロベル」との愛称が付けられた。
9日の予選のタイムは1分4秒95で、ムサンバニの1分52秒72より大幅に良かったものの、順位は59人中59位。それでも、ゴールの際には観客から割れんばかりの歓声を受けた。
大学生のハブテはレース後、「エチオピア人は毎日起きると走るんだ。でも僕は走りたくなかった。水泳選手になりたかった」と語った。
ハブテのぽっちゃり体形を捉えた写真や動画は瞬く間にネット上で話題を集めたが、一方の母国エチオピアでは、ハブテが同国水泳連盟会長の息子であることから、コネによって代表入りを果たしたとの批判がネット上で相次いでいる。
また、ハブテが5日の開会式で旗手まで務めたことも非難の種となった。国の誇りを担う大役が、エチオピアが世界に誇る一流陸上選手に与えられなかったことに国民からは怒りが噴出している。
あるフェイスブック(Facebook)ユーザーは「最下位になってもいい。誰かがならなきゃいけないでしょう? でも実力が全くないのに出場して国全体に恥をかかせるのは許されない。ロベルのような人がこの国には多すぎて、悲しい」と憤りをつづっている。
エチオピアではこのところ各地で激しい反政府デモが相次いでいるが、同国の首都アディスアベバ(Addis Ababa)在住のあるツイッター(Twitter)ユーザーは「ロベルはいま私たちが闘っている人種差別、えこひいき、無能さの象徴だ」と書き込んだ。
一方のハブテ本人は予選敗退後も開き直った様子で、リオで報道陣を前に「なぜ今日の泳ぎが遅かったのか分からないけど、何位でゴールしたかは重要じゃない」と語っている。
エチオピア水泳連盟会長の父親も、国営ラジオ局の取材に対し、「結果は求めていなかった。われわれはただ出場したかった。それだけだ」と、息子を擁護。ネット上ではその直後、会長の解任を求める声が相次いだ。
リオ五輪はハブテが初めて出場した国際大会だった。内陸国エチオピアは国内に国際基準を満たすプールがなく、伝統的に水泳が強い国でもない。
■お家芸の陸上でも批判
エチオピアは陸上が強いが、リオ五輪にはこれまでに五輪で3度金メダルを獲得し、世界チャンピオンに5回輝いた陸上選手のケネニサ・ベケレ(Kenenisa Bekele)ではなく、より若く経験の浅いランナーが出場したことから同国の陸上連盟にも批判が集まっている。(c)AFP