【8月12日 AFP】リオデジャネイロ五輪に出場した地元ブラジルの女子選手、ラファエラ・シルバ(Rafaela Silva)とジョアンナ・マラニョン(Joanna Maranhao)の2人が、自分に失意と涙を強いた人種差別と女性蔑視の中傷に対して宣戦布告した。

 柔道女子57キロ級で金メダルを獲得したシルバは、2012年のロンドン五輪で反則負けとなったことで「猿」と呼ばれるなどの中傷を受けていた。一方、マラニョンは9日の競泳女子200メートルバタフライ予選で敗退したことで、レイプ予告などの脅迫を受けていた。

 シルバは涙を流しながら「このメダルは、私がおりの中に入れられるべきだと言った人々に対する返答です」と述べ、自身の出身地である「ファベーラ(favela)」と呼ばれる貧困街の子供たちの「模範になるものだ」と付け加えた。

 ファベーラの住民に対する差別は、自分が受けたものよりもはるかに激しいものだとシルバは明かしており、「黒人であると、街中で人々から疑いの目で見られる。すれ違う人は皆、財布を隠そうとする」と語った。

 シルバの父親によると、ロンドン五輪後には引退を考えたが、その理由は五輪で敗退したからではなく、人種差別が理由だったという。「娘は自分についてもっとひどいことが書かれているのではないかと恐れ、パソコンを見ることができなかった」

 シルバはこうした中傷に対し、自身が「勝者」になることで応えた。11日に行われた人種差別に関する記者会見に臨んだシルバは、「ロンドン(London)でおりから出てきた猿が、リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)でチャンピオンになった」と語った。

「誰かを襲う黒人ではなくて、ブラジル国民に喜びをもたらす黒人が生まれた。私たちは悪いことばかりではなく、よいことももたらすんだということを私は示したい」

■中傷を力に

 一方、自身は黒人ではないが、黒人の人口比率が高いブラジル北東部出身のマラニョンは、競泳女子200メートルバタフライ予選で敗退した後、涙を流しながら「お前をレイプするとか、お前は死ぬべきだとかいう言葉は、許されるべきではない」と語った。

「ブラジルは男尊女卑の国、人種差別の国、同性愛嫌悪の国、そして外国人嫌いの国です。決めつけているわけではなくて、本当にそういう人たちがいるんです」

 マラニョンは、自分を中傷した人々を相手取り裁判を起こすと宣言。裁判で得た慰謝料は、小児性愛の問題に取り組む団体に寄付すると表明した。

 マラニョンはまた、「人を侮辱したり、中傷したりするためにここに来た」人々に対するメッセージとして、「どうもありがとう!あなたの憎しみを、慈善活動に使わせてもらいます」と語った。(c)AFP