中国・伝説の大洪水、初の証拠を発見 文明史書き換えか
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【8月5日 AFP】中国の黄河(Yellow River)で4000年前に大洪水が起きたことを示す初めての証拠を発見したとの研究結果が4日、発表された。この大洪水は、夏(Xia)王朝とその後の中国文明の誕生につながったとされる。
米科学誌サイエンス(Science)に発表された研究結果によると、大洪水が発生したのはこれまで考えられてきたよりも数百年遅い紀元前1920年。これは、禹(Yu)王による夏王朝樹立の時期が通説よりも遅かったことを意味し、この発見により歴史が書き換えられる可能性がある。
禹王はこの大洪水で、水の流れを元の水路に導くために必要なしゅんせつ工事を指揮し、治水の才能を発揮した人物として名声を得た。研究を主導した南京師範大学(Nanjing Normal University)地理科学部の呉慶竜(Wu Qinglong)教授によると、禹王は秩序の回復を果たしたことにより「中国初の王朝である夏朝を樹立する聖なる権能を手にした」という。
禹王の物語は儒教に基づく統治制度の基礎となったが、近年では洪水が実際に起こったことを疑問視する学者も現れ、王朝国家体制を正当化するための作り話にすぎなかったのではないかと指摘していた。
地質学者からなる研究チームは、青海(Qinghai)省の黄河に沿って調査を行い、土砂崩れによってできた天然ダムの名残や、せき止め湖や突発的洪水で生まれた堆積物を調べた。
論文を共同執筆した米パデュー大学(Purdue University)地球大気惑星科学部のダリル・グレンジャー(Darryl Granger)教授が電話記者会見で語ったところによると、調査の結果、過去1万年間に発生したことが分かっている中でも最大級の大洪水があったことが示された。その際の水位は、現在の黄河よりも38メートル高い位置まで上昇したという。
これほどの大洪水が起きると、岩屑(岩石の破片)などの堆積物が攪拌(かくはん)され、古い土壌と新しい土壌が混ざるため、研究チームは堆積物ではなく、大洪水の原因となったとされる地震の犠牲者の骨から大洪水が発生した年代を測定した。
研究チームによると、この地震により発生した土砂崩れが、川をせき止めて天然ダムを形成。これが後に決壊し、大洪水が発生した。研究チームは、地震で崩壊した建物のがれきの中から見つかった3人の子どもの骨に対し、放射性炭素年代測定を実施。その結果、3人が紀元前1920年に死亡したことが分かった。同地域ではちょうどこの時期、大きな文化革新が起きたという。(c)AFP/Kerry SHERIDAN