■コーチや家族から見た長岡さん

 長岡さんが完泳した際、他の選手たちはすでに水着も乾き、プールサイドでおしゃべりをしていた。しかし、他人のことはあまり関係ないといった様子で「よく泳ぐことが大事。いい泳ぎをしたいと思う」とハッキリとした口調で述べた。

 100~104歳の部で、1500メートル自由形を含む9種目で世界記録を保持している長岡さんは、「寿命がある限りやる」とやる気満々だ。

 1914年、日本が連合軍とともに戦った第1次世界大戦(World War I)の勃発から数日後に生まれた長岡さん。生きることへの強い姿勢には、家族やコーチらも驚かされるという。

 息子の宏行さん(76)は、「おふくろは元気だ」と語る。そして、「生活態度はまったくでたらめ。規則正しい生活なんて一切しない。 おいしいものだけしか食べないし、口に合わないものは食べない。わがままだね」と付け加えた。

 しかし、その一方で、「普通、歳を重ねると記録は落ちる。ところが90歳台で記録は伸びていった。泳ぐたびに世界新を記録していった」と驚きを隠さず、「幸福感を味わうことが生きがいというか、目標というか…そのようなものを持っていることが長生きの秘訣(ひけつ)なのだと思う」と語った。

 長岡さんは現在も山口県で、長年指導を受けてきた澤田真太郎(Shintaro Sawada)コーチの下で、週3回練習に励んでいる。

 澤田コーチは、「指導を頼まれた時は少々戸惑った。悪いところを自覚していたので修正したい、ぜひみてほしいと本人から頼まれた」と当時を振り返った。「もちろん、こういう方とは今まで会ったことがない。自分で目標設定し、その目標にたどり着くためにやることを徹底的にやる。目標に対しては頑固。食事もしっかりとられる」と長岡さんを称賛した。

 長岡さんの傍らに座った宏行さんは最後に、「世界一のお母さんですね、素晴らしいですね」との言葉に、「ええ、そうですね」と誇らし気に相づちを打った。(c)AFP/Alastair HIMMER