【7月28日 AFP】日常的な運動不足に起因する健康問題により、2013年の世界の経済損失は約675億ドル(約7兆円)に上った。研究論文が28日、発表された。

 英医学誌ランセット(The Lancet)に掲載された論文によると、この損失額は、医療費538億ドル(約5兆6000億円)と生産性の損失による損失額137億ドル(約1兆4000億円)に大別される。このうち医療費については、税金からの拠出が312億ドル(約3兆3000億円)、医療保険会社を含む民間セクターによる支払いが129億ドル(約1兆4000億円)、家計が直接負担した分の97億ドル(約1兆円)となっている。

 研究チームは、世界人口の93%を占める計142か国についての経済情勢や人口データを基に調査を行った。ただ、これらのデータは、冠動脈性心疾患や脳卒中、2型糖尿病、乳がん、結腸がんなど、運動不足に起因する疾患のうちの5つのみを対象としたものであるため、数字が過小評価されている可能性が高い。

 運動不足の世界的な「流行」がもたらす経済的損失の推計を行ったのは、今回の論文が初めて。座ってばかりの生活スタイルに関連する要因で、毎年500万人が命を落としていることが指摘された。

 他方で別の研究によると、日々8時間以上座る人は、少なくとも1日当たり1時間の運動を行うことで、増加する死亡リスクを帳消しにできるという。

 世界保健機関(WHO)は、1週間に150分以上の運動を奨励しているが、これは100万人以上のデータを分析した研究論文が推奨する1日60分よりも大幅に少ない。

 今回の研究対象者では、1日に1時間以上運動していたのは全体の約4分の1にすぎなかった。

 論文の主執筆者で、ノルウェースポーツ科学大学(Norwegian School of Sport Sciences)のウルフ・エケルンド(Ulf Ekelund)氏は、1日1時間の運動が不可能である場合は、「少なくとも毎日なんらかの運動を行うことで、リスク減少の一助となる可能性がある」と語っている。(c)AFP/Mariëtte Le Roux