「まるでアウシュビッツ行き列車」 沈没移民船から700人の遺体収容 証言
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【7月22日 AFP】「あの連中は、所かまわずぎゅうぎゅうに詰め込んだんだ。それが最後の旅路になってしまった人々を、まるでアウシュビッツ(Auschwitz)行きの列車みたいに」——移民数百人を乗せて沈没した漁船からの遺体収容というつらい任務は1年をかけて終わったが、イタリア消防当局の広報担当者、ルカ・カリ(Luca Cari)さんは、目撃した恐ろしい光景に今もさいなまれている。
「船内では、1平方メートルに5人が押し込まれていた」。カリさんは21日の伊週刊誌パノラマ(Panorama)に掲載された記事で、こう証言した。
悲劇が起きたのは、2015年4月だった。木造のトロール漁船を転用した移民船が、救難信号を受信して駆け付けたポルトガルの商船とリビア沖で衝突したのだ。衝撃にパニックを起こした移民たちが船体の片側に殺到し、暗闇の中で船は転覆。助かったのは28人だけだった。
数か月後、沈没した船体は引き上げられ、伊シチリア(Sicily)へ運ばれた。消防士らの手で先週ようやく最後の遺体が収容され、伊検察当局が発表した犠牲者数は700人に上る。
カリさんによれば船内では、巻き上げた錨(いかり)を収納するハッチから、汚水排水用ポンプが設置された船底の小部屋、機関室に至るまで、あらゆる場所で遺体が見つかった。遺体の状況から、船が転覆した後、移民たちが船から出ようと最期まで死力を尽くしていたことは明らかだった。
「沈みゆく船から脱出しようとした人々の姿は、私たちの網膜に焼き付いて永遠に消えないだろう」と、シチリアでの遺体収容任務を指揮した消防士の1人は語っている。消防士らは、母親の遺体の腕にしがみついたまま亡くなった子どもたちを見つけたが、母子を引き離す気にはなれなかったという。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2014年以降に欧州を目指して地中海を渡る危険な船旅を試み、死亡したか行方不明になった移民の数は1万人を超えている。(c)AFP