【7月22日 AFP】フランス・パリ（Paris）北郊で、警察に逮捕された若者が拘束中に死亡したことから、怒った住民らが車両に放火するなど暴動が3夜にわたって続いている。治安部隊との衝突で負傷者や逮捕者も出ている。

　暴動が始まったのは19日夜、パリ北方30キロにあるボーモンシュルオワーズ（Beaumont-sur-Oise）で、アダマ・トラオレ（Adama Traore）さん（24）が警察に逮捕されて間もなく死亡したことが判明したためだ。

　当局は、トラオレさんが死亡時に重症感染症だったとする検視結果を発表。また、体にはいくつか暴行の跡が認められたことを明かした。

　捜査に近い筋の情報によると、トラオレさんは兄弟が恐喝の容疑で逮捕されるのを妨害したため身柄を拘束されたという。

　地元検察当局の説明では、トラオレさんは警察署に護送される「車内で意識を失った」。至急、救急隊員が呼ばれて治療を試みたが、トラオレさんの意識は戻らなかったという。検察は、トラオレさんの感染症について「非常に重篤」で「複数の臓器に影響が及んでいた」とし、検視で見つかった体の傷については「著しい暴行を示すもの」ではないと結論付けた。

　しかし、トラオレさんの家族は遺体を埋葬する前に、外部の専門家の意見を求める考えだ。一家を担当する弁護士は「アダマが感染症にかかっていたとしても、それは死因の説明にはならない」と述べている。

　ボーモンシュルオワーズの若者たちは、トラオレさんの死は警察に責任があると確信を持って主張する。「彼は健康で、背が高く、スポーツ好きでがっしりした体格だった」と30歳男性。一方、24歳の青年は「隠ぺいを図っているのは分かっている。あぶり出そうとしなければ、何も出てきやしない。僕たちはそう思っている」と語った。

　フランスでは、長引く非常事態を受けて治安部隊の負担が限界に近づく中、政府に抗議するデモが暴徒化し警察官に憎悪を向ける事例も出ている。

　パリ郊外では2005年、警察に追われた若者2人が逃げ込んだ変電所で感電死したことをきっかけに大規模な暴動が起きた。このときの暴動は、貧困がまん延し失業率の高い大都市近郊の団地に住み、社会から爪はじきにされていると感じていた移民や移民二世たちの不満が爆発したものとみられている。(c)AFP/Tiphaine Le LIBOUX、Myriam LEMETAYER