【7月17日 AFP】フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領は15日、南部ダバオ(Davao)の麻薬取締局で、同国の麻薬王の一人と疑われる実業家のピーター・リム(Peter Lim)氏と面談し、面と向かって殺すぞと脅した。

 犯罪に容赦しない姿勢を示しているドゥテルテ大統領は、このギャング映画さながらの奇妙な面談で「処刑するよ……始末するよ」と発言し、リム氏に麻薬から手を引くよう警告した。

 フィリピン政府は16日、リム氏を「フィリピンで違法な麻薬密売に手を染める3人の麻薬王の一人」とするタイトルを付けた面談の映像を動画共有サイト「ユーチューブ(YouTube)」で公開した。

 一方のリム氏は、自分は大統領が今月7日に行った国営テレビの演説でやり玉に挙げられた中国系フィリピン人で麻薬密売人のピーター・リムとは別人だと主張した。

 リム氏は、7日に大統領が「彼(ピーター・リム)は飛行機から出てきた瞬間、命を落とす」と演説して以来、殺されるのではないかという不安を抱えているという。フィリピン中部のセブ(Cebu)市でさまざまな事業を営んでいるリム氏は、「セブにいる私の家族はいま深刻な問題を抱えています。あらゆる脅迫を受けています」と述べた。

 しかし大統領は「謝るつもりはない。君は麻薬王だと疑われているからここにいるんだ」と言い返した。大統領との面談中、リム氏は違法薬物への一切の関与を否定する一方、1997年に麻薬関連容疑で捜査を受けたことは認めた。

 リム氏は大統領の犯罪撲滅運動への協力を誓い、「わが国にあなたがいてとても幸運です。わが国を救うことのできる大統領はあなただけです。あなたは本気だ」と付け加えた。

 ドゥテルテ氏は、麻薬関連やその他の犯罪容疑者を容赦なく殺害すると公約して大統領選で大勝した今年5月以降、麻薬と関連があるとして警察幹部や政治家、民間人に公然と恥をかかせてきた。全国的な取り締まりで400人近い麻薬関連の容疑者が警察や自警団によって射殺されている。(c)AFP