仏トラック突入、容疑者「うつだった」と父親 当局は存在把握せず
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【7月16日 AFP】フランス南部ニース(Nice)で革命記念日(Bastille Day)の花火見物客にトラックが突っ込み、少なくとも84人が死亡した事件で、仏当局は15日、警察に射殺された運転手の男を、チュニジア国籍のモハメド・ラフエジブフレル(Mohamed Lahouaiej-Bouhlel)容疑者(31)と特定した。軽犯罪歴はあるがテロ組織との関連は知られていなかったという。
ラフエジブフレル容疑者の運転するトラックは、ニース名所の海岸沿いの遊歩道「プロムナード・デザングレ(Promenade des Anglais)」で花火を見ていた群衆に突っ込み、2キロにわたってジグザグに走行して人々をはね飛ばした。死者には未成年少なくとも10人が含まれているほか、フランソワ・オランド(Francois Hollande)仏大統領によると現在も50人以上が危篤状態にあり、犠牲者はさらに増加する恐れがある。
仏検察当局のフランソワ・モラン(Francois Molins)検事はラフエジブフレル容疑者について、仏情報当局では存在を「全く把握していなかった」と述べるとともに、今回の攻撃はイスラム過激派組織の呼び掛けに「完全に沿ったもの」との見方を示した。
■人付き合いを避けていた容疑者、「うつだった」と父親
ラフエジブフレル容疑者の父親は15日、AFPの取材に対し、同容疑者は数年前から「うつ状態」だったが宗教的に傾倒した様子はなかったと語った。
チュニジア東部の自宅で取材に応じた父親によると、ラフエジブフレル容疑者は「2002~04年ごろにノイローゼ気味になり、突然怒ったり叫び出したりするようになって、目の前にあるものを端から壊して回った」。そこで家族は医者に見せ、薬を処方してもらったという。
父親から見たラフエジブフレル容疑者は、誰とも話したがらず「いつも一人で、沈んでいた」。祈ることも断食をすることもなく、酒を飲み、薬物にも手を出していたという。フランスに行ってからは家族とも連絡を絶っていたという。
ニース市内で質素に暮らしていたラフエジブフレル容疑者について、近隣住民は、挨拶をしても返事をせず、人付き合いを避けていたと証言している。
ラフエジブフレル容疑者は犯行に使用したトラックを11日に借りていた。モラン検事によると、同容疑者は事件当時「警官3人に向かって何度か発砲した」後に射殺された。車内からは拳銃やライフル銃、手榴弾が発見されたが、全て偽物だったという。
警察情報筋によれば、捜査当局はラフエジブフレル容疑者の前妻を拘束し、事情聴取しているという。
■3度目の攻撃
フランスが大規模な攻撃の標的となったのは、この1年半で3度目。「フランスは、自由を象徴する国民の日に攻撃された」――テレビ演説でこう述べたオランド大統領は、事件を「テロ攻撃」と呼び、外国人も多数犠牲になったことを明らかにした。16日から3日間を国喪の日とするという。
一方、パリ(Paris)市庁舎は15日にエッフェル塔(Eiffel Tower)のイルミネーションを仏国旗の3色にし、犠牲者を追悼すると発表した。
フランスでは昨年1月に風刺週刊紙シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)本社が襲撃を受けたのに続き、同11月にはパリで同時攻撃事件が発生。これまでに合わせて147人が死亡している。パリの事件以降フランス全土は今も非常事態宣言下にあり、厳重な警備体制が敷かれているが、今回の事件は決意を固めた個人による攻撃を防ぐことの難しさが浮き彫りになった。(c)AFP