【7月13日 AFP】(更新)12日に行われたMLBオールスターゲーム2016(2016 All-Star Game)で、試合前のカナダ国歌を担当したボーカルグループのメンバーが、「命はすべて大切(All Lives Matter)」という歌詞を挿入した。グループはすぐさま問題について謝罪し、歌詞を挿入したメンバーに活動停止処分を科した。

 今年のMLBオールスターでカナダ国歌を担当したのは、オペラとポップ音楽を融合したスタイルで人気の4人組グループ、カナディアン・テナーズ(The Canadian Tenors)。その一人、レミジオ・ペレイラ(Remigio Pereira)が、「僕たちはみな兄弟姉妹、偉大なるお方の前では命はすべて大切」と歌うと、スタジアムは騒然となり、ソーシャルメディアには否定的な反応があふれた。

 ペレイラが歌った「命はすべて大切」という歌詞は、警察官による黒人射殺を契機に米国で巻き起こっている抗議運動のスローガン「黒人の命は大切(Black Lives Matter)」に対抗するスローガンとしてたびたび使われている。

 カナディアン・テナーズはその後、声明を発表し、ペレイラの「恥ずべき」行動を「心より謝罪します」とコメントした。そしてペレイラは「一匹狼」タイプで、ほかのメンバーには相談せずに今回の行動に及んだとしている。

「ほかのメンバーは、レミジオ・ペレイラの行動に衝撃を受け、困惑しています。ペレイラはわれわれの宝である国歌を改変し、今回の舞台を自身の政治観を表明する場として利用しました」

「グループのメンバーによる今回の行動は、極めて自己中心的であり、当事者はなにかしらの処分が下るまでテナーズの一員として公演を行うことはありません」

 カナディアン・テナーズは、2010年のバンクーバー冬季五輪など、これまでにも大きなスポーツイベントでパフォーマンスを披露してきた経歴があり、スティング(Sting)、ニール・ヤング(Neil Young)、セリーヌ・ディオン(Celine Dion)ら著名なアーティストとの共演の経験もある。

 ボーカリスト兼ギタリストのペレイラは、ポルトガル領アゾレス(Azores)諸島出身の両親を持つため、ポルトガル音楽への造詣が深いが、近年のSNSへの投稿からは、菜食主義を除けば、何らかの極端な思想を持っていることはうかがえなかった。

 MLBのオールスターゲームでは、トロント・ブルージェイズ(Toronto Blue Jays)がカナダに本拠を置くことから、米国歌とカナダ国歌の両方が歌われる。(c)AFP