【7月13日 AFP】オーストリア政府は12日の閣議で、ナチス・ドイツ(Nazi)の指導者アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)の生家を国が強制的に収容することを決めた。ただ、その建物の今後の取り扱いをめぐっては意見が割れている。

 法制化には議会の承認が必要だが、法律が成立すれば、建物を1世紀以上所有していた一族の現在の持ち主は、ここを所有する権利を強制的に奪われることになる。建物をめぐっては数年間にわたり話し合いが行われてきたが、まとまることはなかった。

 ただ、収容後の取扱いをめぐっては、政府内で意見が割れている。ウォルフガング・ソボトカ(Wolfgang Sobotka)内相は、同国北西部の町ブラウナウ・アム・イン(Braunau am Inn)にあるヒトラーの生家を取り壊すことを主張しているが、ラインホルト・ミッテルレーナー(Reinhold Mitterlehner)副首相は、ドイツ国境近くの同建物は文化遺産として保護されており、「取り壊しはできない」ことを指摘。博物館など「教育目的」で使用できるだろうとしている。

 政府は、4月にこの家を収容する意図を発表しているが、その狙いは、この建物がネオナチの聖地になることを阻止することだ。12人からなる委員会は現在、その取り扱いについて、様々な選択肢を検討している。

 ただ、地元の歴史家らによると、ヒトラーが生まれたのは、この建物ではなく、かなり以前に取り壊された裏側の建物だったという。

 生家とされる建物前の石碑には「平和と自由、民主主義のために。ファシズムを二度と繰り返してはならない。数百万人の死者が警告する」と刻まれている。(c)AFP