【7月9日 AFP】米テキサス(Texas)州ダラス(Dallas)で起きた警官の暴力に対する抗議デモ中に発生し警官5人が死亡、警官と民間人合わせて9人が負傷した銃撃事件の容疑者が「爆弾ロボット」で爆殺された。米警察が自動装置を使って人間を殺害した初めての例である可能性があり、警察における科学技術の役割拡大を示している。

 ダラス市警察のデービッド・ブラウン(David Brown)署長は8日、警官5人が殺害された後、それ以上の危険を冒すことなく狙撃犯に対処するには「爆弾ロボットを使用する以外の選択肢はなかった」と報道陣に語った。

 米シンクタンク「ニュー・アメリカ・ファウンデーション(New America Foundation)」の特別研究員ピーター・W・シンガー(Peter W Singer)氏は短文投稿サイト「ツイッター(Twitter)」に、「その通り、警察活動においてこのような形でロボットが使われたのはこれが初めて」と投稿した。

 科学技術コンサルティング企業の創業者で、21世紀の武力衝突に関する著書もあるシンガー氏によると、軍はイラクでMARCbotと呼ばれるロボットを今回と同じく場当たり的に使用したことがあるという。

 ダラス当局は爆弾ロボットの詳細について明らかにしていないが、同市の危機管理部門の目録には、米航空宇宙大手ノースロップ・グラマン(Northrop Grumman)が爆発物処理・軍用に開発したロボット「Andros(アンドロス)」が記載されている。一部メディアは、狙撃犯殺害にこのロボットが使用されたのではないかと報じている。

 ダラスで用いられたものがなんであろうと、警察や軍の危険をはらんだ任務に対処するためロボットの使用は拡大するとみられている。

 ロボット開発者の間では殺傷力のある火器をロボットが運用する可能性についてあまり重大視されていないが、一部のアナリストは警察と軍の両方におけるこの問題について議論することが必要だと主張している。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)とハーバード大学法科大学院(Harvard Law School)の国際人権クリニック(International Human Rights Clinic)が2014年に発表した報告書は、警察活動における完全自律型兵器の使用に懸念を示した。

 同報告書は「完全自律型兵器は警察活動のあらゆる状況に対処するようにはプログラムできない可能性がある」「予期せぬ事態の中で警察が違法で恣意(しい)的な殺害を回避することを可能にする判断力や共感力といった人間性を欠く可能性もある」と指摘している。(c)AFP/Rob Lever