【7月8日 AFP】ヒトパピローマウイルス(HPV)に関連するがんの患者数が米国で増加傾向にあり、年間3万9000人近くに達しているとする政府報告書が7日、発表された。

 米疾病対策センター(CDC)によるこの推定患者数は、2008年~2012年の期間のもので、2004年~2008年の年間患者数3万3000人強より増加していた。

 HPVがんは、男性と女性の生殖器部や、子宮頸(けい)部、頭、首、のどなどに多くみられる。

 今回の報告書に記載されているがん患者には、女性の子宮頸がん患者約1万1700人、男性の口腔(こうくう)がん患者1万2600人あまりが含まれていた。

 一般的な性感染症の一つであるHPV感染は、予防のためのワクチンが存在し、男児と女児ともに11歳から使用できる。

 だが、多くの10代若者は、通常は3回に分けて投与されるこのワクチンの接種を受けていない。

 CDCの報告書によると、2014年には、13~17歳の思春期の少女のうち、1回目の接種を受けた割合が60%で、3回すべて受けた割合は40%にすぎなかったという。

 10代少年のワクチン接種率はさらに低く、1回目を受けた割合が42%、3回すべて受けた割合が22%だった。

 CDCは「HPVを原因とするがんの症例2万8500件は、HPVワクチンで予防できたと、CDCの科学者らは強調している」と指摘した。

「子宮頸がんのスクリーニング検査では、がんに発展する前の前がん状態を発見できる」

 米オハイオ州立大学(Ohio State University)がん制御研究計画(Cancer Control Research Program)の共同ディレクターを務めるエレクトラ・パスケット(Electra Paskett)氏は、米国の現在のHPVワクチン接種率を「極めて嘆かわしい」と表現した。

「HPVワクチンの接種率を高めるためには、HPVワクチンに対する認識を、性感染症を予防するものから、がんを予防するワクチンへと変える必要がある」と、パスケット氏は指摘した。

「これは、がんの治療に勝るもの、がんの予防なのだ」(c)AFP