【7月8日 AFP】イラクのクルド系少数派ヤジディー(Yazidi)教徒の女性ナディア・ムラド(Nadia Murad)さん(23)は、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の性奴隷にされ、3か月の悪夢を耐え忍んだ。

 2年近く前にイスラム教徒であることを示す偽の身分証明書を手に入れ、どうにかISから逃れたムラドさんは今、世界の指導者たちにこう訴えている。ISの幹部はジェノサイド(民族大虐殺)の罪で裁かれるべきだ、と。

「ジェノサイドだと認定しなければいけません」。ほっそりとしたムラドさんはスイスのジュネーブ(Geneva)で通訳を介してAFPの取材に応じ、穏やかな口調に憤りをにじませた。

 イラクでは政府軍が6月26日に中部の要衝ファルージャ(Fallujah)を完全奪還するなど、ISに対して攻勢をかけている。こうした中、国連(UN)の調査官はISの被害者に正義をもたらそうと新たな取り組みに乗り出している。

 イスラム教徒でもアラブ人でもないヤジディー教徒は宗教上の少数派として、シリアとの国境に近いイラク北部に50万人以上が居住していた。しかし、キリスト教徒やユダヤ教徒のような「啓典の民」ではないとして嫌悪するISが迫害。2014年にはイラク北部のシンジャル(Sinjar)でISによる大量虐殺に遭い、数万人が脱出を余儀なくされたほか、少女を含む女性数千人が「戦利品」として拘束された。

 国連(UN)のシリアに関する独立国際調査委員会(COI)は先月、ISがヤジディー教徒に対するジェノサイドを続けている証拠をまとめたと公表している。