【7月7日 AFP】米国は6日、深刻な人権侵害に直接責任があるとして、北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長を初めて制裁対象に指定した。

 米当局は、金氏と政権の最高幹部10人について、司法手続きにのっとらない処刑や、政治犯収容所での強制労働や拷問など広範な虐待を行い、北朝鮮を「世界で最も抑圧的な国の一つ」にした首謀者として制裁対象に加えた。また、厳しいメディア検閲や、外国映画を見たことを理由に人々を投獄するといった学術的・文化的活動の弾圧についても責任があるとした。

 米財務省は、金氏には北朝鮮の国家安全保衛部と人民保安部を監督する立場として、これらの虐待に責任があると指摘。また、崔富一(チェ・ブイル、Choe Pu Il)人民保安部長や、姜成男(カン・ソンナム、Kang Song Nam)国家安全保衛部局長、金氏への忠誠心を監視する党組織指導部の趙延俊(チョ・ヨンジュン、Cho Yon Jun)第一副部長ら政権幹部10人を、虐待に関与したと初めて名指しした。

 米当局によると、国家安全保衛部は政治犯収容所に8万~12万人を送り込んでおり、収容所では拷問や処刑、性的暴行、餓死、奴隷労働が日常的に行われている。また、人民保安部は北朝鮮各地の警察署、拘置所、労働収容所を管理し、取り調べの際に「容疑者の品位を組織的に傷つけ、脅迫・拷問している」という。

 今回の制裁指定は、米国務省が北朝鮮の治安機関と政治囚収容所における虐待に関する報告書を発表するのに合わせて行われた。制裁内容は米国内の資産凍結と米国人との取引禁止で、即効性のあるものではないことは米当局も認めている。(c)AFP/Paul HANDLEY