ダッカ襲撃事件、妻殺害にさいなまれる夫の苦悩
このニュースをシェア
【7月5日 AFP】(写真追加)携帯電話にかかってきた一本の電話が、ジャンニ・ボスケッティ(Gianni Boschetti)さんの命を救った──。バングラデシュの首都ダッカ(Dhaka)にある飲食店をイスラム武装勢力が襲撃し、人質20人を殺害した事件が発生する数分前、イタリア製生地を取り扱う会社で働くボスケッティさんは、この電話に出るために店の外へと出た。
妻のクラウディア・マリア・ダントナ(Claudia Maria D'Antona)さんは、店内に残っていた。そして、他の大勢の客らと共に捕らわれ、人質となった。クラウディアさんは夫の名前を金切り声で叫び、その後はしんと静まり返った。ボスケッティさんは店の庭に数時間隠れていたが、その後クラウディアさんの声を聞くことはなかった。
伊紙レプブリカ(La Repubblica)に対し、ボスケッティさんは、「最後に妻の声を聞いたのは、店の中から僕を呼んだ声だ。店内で何が起きているのか…恐ろしくてたまらなかった。妻の元に行くこともできず、苦悩にさいなまれた」と語った。
クラウディアさんは、ダッカの高級住宅地にある飲食店「ホリー・アーティサン・ベーカリー(Holey Artisan Bakery)」で起きた襲撃事件で殺害された9人のイタリア人のうちの1人。1日夜に発生した事件は翌朝、治安部隊の突入により収束した。他に日本人7人、バングラデシュ人2人、米国人1人、インド人1人が殺害された。この事件では、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が犯行声明を出している。
店内で惨劇が繰り広げられている間、ボスケッティさんは庭に隠れながら、恐怖におびえた人質たちの叫びを聞き続けた。
ボスケッティさんが確認したクラウディアさんの遺体は、1発の銃弾で殺されたようだった。「何時間も奇跡を信じていた。だけど最後は事実を受け入れざるを得なかった。ひどい状態の遺体も見た。殴られ、鋭い武器で切り付けられ…妻はそうではなかった。少なくとも苦しまなかったのだと思いたい」
(c)AFP