英EU離脱、タータンやスコッチウイスキーの将来はどうなる?
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【7月1日 AFP】英国の欧州連合(EU)離脱が決まった国民投票から1週間、「ブレグジット(Brexit)」の衝撃は、スコットランド(Scotland)伝統の格子柄の織物タータンやスコッチウイスキーの未来にも暗い影を落としている。
イングランド(England)と境を接するボーダーズ(Borders)地方にあるセルカーク(Selkirk)は織物産業の町だ。中でも、世界最大のタータン生産元であるロッカロン(Lochcarron)社では、故ダイアナ元妃(Princess Diana)をしのんでデザインされた水色とピンクのパステル調のタータンなど1500種にも上る織柄が製造されている。全て「100%スコットランド製」だ。
だが今、従業員94人のロッカロン社は金融市場での通貨ポンドの動向を見守りつつ、会社の先行きを懸念している。
ロッカロン社ではタータンの製造に使う精密機器や原料のほとんどを欧州からの輸入に頼っており、ポンド安が続けばコスト高騰につながる恐れがある。「これが(国民投票結果の)最初の痛手となるだろう」と、製造部門を統括するデービッド・リデル(David Riddell)氏は言う。
セルカークの織物工場には、多くのスコットランド氏族や企業、団体がオリジナルのタータン柄を発注している。ロッカロン社の顧客には、ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)やディオール(Dior)、ジャン・ポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)、ラルフローレン(Ralph Lauren)といった著名ファッションブランドも多い。同社の売り上げの46%が英国外からだ。
■「スコッチ」への影響は
エディンバラ(Edinburgh)に本部を置くスコッチウイスキー協会(Scotch Whisky Association)は、国民投票では「残留」派を公然と支持していた。広報のデービッド・ウィリアムソン(David Williamson)氏によると、今は「スコットランド政府ともロンドンの英政府当局とも接触しつつ、(EU本部のある)ブリュッセル(Brussels)でも積極的に活動している」という。「流動的な状況を可能な限り把握するため」だ。
スコッチウイスキーの未来の鍵を握る問題の一つが「地理的表示保護(PGI)」の行方だ。PGIは特定の地域で生産された食品や飲料について原産地名を保護するEUの規定で、これに基づき現在は、スコットランド以外の場所で生産されたウイスキーに「スコッチ」の名称をつけることはできない。
スコッチウイスキーは輸出の3分の1がEU市場向け。4万人を雇用するスコットランドのウイスキー産業がEU離脱で失うものは大きい。
ただ、ウィリアムソン氏は「500年の間、われわれ(スコッチウイスキー産業)は数々の戦争や革命を生き延び、浮き沈みを繰り返してきた」と述べ、ブレグジットの暗雲が晴れれば再び繁栄が続くと静かな自信も示した。(c)AFP/Marie GIFFARD