世界772位ウィリスの夢物語、フェデラーに完敗し幕 ウィンブルドン選手権
このニュースをシェア
【6月30日 AFP】テニス、ウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2016)は29日、男子シングルス2回戦が行われ、マーカス・ウィリス(Marcus Willis、英国)は第3シードのロジャー・フェデラー(Roger Federer、スイス)に敗れ、おとぎ話には幕が下りたが、それでも大会の新しいヒーローにとっては忘れられない最高の一日となった。
どん底からの成り上がりの物語で一躍人気者となった世界ランク772位のウィリスは、大会史上最大の番狂わせこそならなかったが、フェデラー戦という夢の瞬間を余さず楽しみ、ファンの心をわしづかみにした豊かな感情表現を試合を通じて見せ続けた。
ウオーミングアップの段階から、自分のいる場所が信じられず、心ここにあらずといった浮足立った雰囲気を身にまとっていたウィリスは、まるで、四大大会(グランドスラム)優勝17度のチャンピオンとプレーしてみませんかといってスタンドから選び出された観客のようだった。
それでも、フェデラーのイニシャルが入った「RF」のロゴ入りシャツを着たウィリスは、相手のミスで開幕ゲームの最初のポイントを取ると、ガッツポーズを見せてファンを沸かせた。第2セットの第2ゲームにようやく初めてゲームを獲得したときには、客席でスタンディングオベーションが起こった。
最終的には0-6、3-6、4-6の完敗を喫したものの、フェデラーから24本のウイナー、9本のサービスエースを決め、2度のブレークチャンスをつかんだ25歳は、「何言ってるんだって思うだろうけど、負けてがっかりだ」と話した。
「きついね。悔しいよ。最初からプレーは問題なかった。だんだん試合に入っていけた。楽しかったよ。いいプレーをして、フェデラーと何セットか戦ったんだから、よくやった方じゃないかな」
「自分にビールのご褒美をあげるよ!」
一方、ウィリスの快進撃を止めるという、誰からも感謝されない任務を課されたフェデラーは、騒然とした雰囲気のセンターコートで黙々とその仕事をこなした。フェデラーは3回戦で、アレクサンドル・ドルゴポロフ(Alexandr Dolgopolov、ウクライナ)とダニエル・エヴァンズ(Daniel Evans、英国)の試合の勝者と対戦する。
フェデラーは試合後、「普段とはかなり違う試合だった。マーカスのおかげで、コートは信じられないほどの活力に満ちていた。ファンを味方につけて、プレーや、個性もうまく使っていた」と話した。
「すごく新鮮だったよ。最初から、これまで経験してきたウィンブルドンの試合とはまったく別物になると思っていた。マーカスには何も失うものがなかった。コートへ出て楽しめばよかったし、彼は素晴らしかったと思う」
わずか数か月前、イングランド(England)中部にあるウォリック・ボート・クラブ(Warwick Boat Club)で子どもや年配者にテニスを教える仕事を続けながら、ウィリスは先の見えない現役生活に見切りをつけようかと悩んでいた。
それでも、新しくできた恋人の言葉に従って最後の勝負に出たウィリスは、予選6試合を勝ち抜いて本戦に進出すると、1回戦ではランキング54位のリカルダス・ベランキス(Ricardas Berankis、リトアニア)を破った。
そのご褒美が、大会を7度制している偉大な選手との1時間24分の打ち合いだった。両者の間にあった歴然とした格の違いを考えれば、ウィリスは十分に健闘したと言える。(c)AFP/Steven GRIFFITHS