【6月29日 AFP】脳への損傷を引き起こすジカウイルスへのワクチン開発をめぐり、マウスを使った動物実験など2件に成功したとの研究結果が28日、発表された。

 1件目の研究を行ったチームは、2種類の試作ワクチンを実験用マウスで試した結果、1回の接種で「ジカウイルスに対する完全な防御がもたらされた」と報告している。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された研究論文の共同執筆者で、米ハーバード大医学部(Harvard Medical School)のウイルス学およびワクチンの研究センターで所長を務めるダン・バルーフ(Dan Barouch)氏は、「これらの実験結果は、安全で有効な人のジカウイルスワクチン開発が成功するだろうとの楽観的な見方を促すものだ」と述べた。

 アカゲザルのジカウイルス感染に関する独立した2件目の研究では、バルーフ所長の楽観論に同調する見解が表明されている。人と遺伝子的に近縁関係にあるアカゲザルは、医学的試験に非常に良く適合する動物モデルだ。

 米国を拠点とする研究チームは、ネイチャー誌の姉妹誌の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表した研究論文で、ジカウイルスを実験用のサルに感染させることに初めて成功したと報告している。

 実験の結果、人と同様にほぼ症状のない感染を1回経験すると、その後にさらされるジカウイルスに対する「完全な防御」が得られることを、研究チームは発見した。

 論文の共同執筆者で、米ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin-Madison)のドーン・ダドリー(Dawn Dudley)氏は「これは、ワクチンがジカウイルスに対して極めて有効である可能性を意味する。重要な発見だ」と述べ、「すでにジカウイルスに感染している人が今後、例えば妊娠中などに感染することがないことを示している」と続けた。

 バルーフ所長によると、研究チームが試験した2種類のワクチンは、現在ブラジルで流行しているものを含む2種のジカウイルス株に対して作用したという。

 ジカウイルスに対する完全防御を動物モデルで実現したのは、今回の研究が初めてであり、「ジカウイルスワクチン開発に向けた一歩」であると、バルーフ所長は主張している。ただ、免疫が持続する期間については不明という。

 しかし、外部の専門家らは、今回の研究結果を評価する一方で、不明な点がまだ数多く残されていることを強調する。

 特に重要なのは、デングなど、ジカウイルスと同じ種類に分類される他のウイルスに対する抗体が、このワクチンで生成されるかどうかが不明であることだ。専門家らは、ジカウイルス抗体との交差反応で、これらウイルスの感染力が危険なレベルにまで高まる恐れがあると指摘した。

 ワクチン開発では今後、人への臨床試験開始までに、他のジカウイルス株に対するマウスやサル実験を行う必要がある。(c)AFP/Mariëtte Le Roux