【6月29日 AFP】英国民投票で欧州連合(EU)からの離脱が決まって以降、同国では差別的な嫌がらせ行為が相次いでいる。首都ロンドン(London)にあるポーランド人コミュニティーセンターのドアには、いたずら書きの黄色いペンキの跡が生々しく、同センターのテナントらは、嫌がらせに対する恐怖心を吐露した。

 ロンドン市内ハマースミス(Hammersmith)地区にあるポーランド社会文化協会(POSK)内でギャラリーを運営するヨアンナ・チェハノフスカ(Joanna Ciechanowska)さんはAFPに対し、「嫌悪感と恐怖心が入り交じった感情。1962年に同センター内に入居して以来、差別を受けたことはなかった」と語り、「とても心配。電車に乗っていたら、突然隣の人から『帰って荷造りしろ』と言われたという友人らの話も聞いた」と続けた。

 チェハノフスカさんは、人々の間に見られる緊張の高まりについて、その原因が国民投票に向けて分断をあおるようなキャンペーンが展開されたことにあるとみており、「一部の人の心にあった残虐性の種が、あおられて噴出したのだろう」と指摘した。

 センターの受付担当者によると、入り口の落書きは「くそ野郎─出て行け」と、ののしる言葉だったという。

 その一方で、受付のカウンターには、善意のメッセージが添えられた花束が10束以上置かれていた。中には、「国民投票の結果を、差別の心を表現する許可証と解釈した人がいるようだ。本当におぞましいこと」という言葉も見られた。

 デービッド・キャメロン(David Cameron)首相は、英国のEU離脱が決まった後に報じられた一連の差別的行為について「卑劣」と非難している。

 警察当局によると、ヘイトクライム(憎悪犯罪)の報告サイト「トゥルー・ビジョン(True Vision)」には、投票が行われた23日から26日までの間に85件の事例が寄せられたという。前月同期の54件から57%増となった。

 ロンドンのサディク・カーン(Sadiq Khan)市長は27日、一連の嫌がらせ行為を受け、警察当局に警戒を強化するよう求めている。

 反差別団体「ファー・ライト・ウオッチ(Far Right Watch)」のジョン・オコンネル(John O'Connell)氏によると、直近3日間に、「言葉による暴力から身体的暴力」まで90件以上が報告されているという。(c)AFP/James PHEBY