世界772位の無名選手がウィンブルドンで快進撃、2回戦の相手フェデラーも称賛
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【6月28日 AFP】男子テニス、世界ランキング772位のマーカス・ウィリス(Marcus Willis、英国)が今年獲得した賞金は、わずか292ドル(約3万円)だった。しかし、現在開催中のウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2016)ではシングルス2回戦に進出した上に、次戦はロジャー・フェデラー(Roger Federer、スイス)と対戦する。
25歳のウィリスはアマチュア選手のコーチを本職としており、先の見えないプロのキャリアを諦めようとしていた。しかし、恋人に励まされて最後のチャンスにかけたウィリスは、予選を突破してウィンブルドンの本戦出場を果たすと、27日の1回戦では世界54位のリカルダス・ベランキス(Ricardas Berankis、リトアニア)相手に6-3、6-3、6-4で番狂わせを演じた。
今回のウィンブルドンで5万ポンド(約680万円)以上の賞金を獲得したウィリスにとって、予想外の事態はそれだけではなかった。数時間後にはフェデラーがギド・ペラ(Guido Pella、アルゼンチン)を破り、無名の英国選手が四大大会(グランドスラム)通算17回の優勝を誇る偉大な選手とまさかの対戦を実現させるのだ。
ウィンブルドンで通算7度の優勝を誇るフェデラーは、資金を募るために不特定多数のネットユーザーが参加する「クラウドファンディング」を立ち上げて話題になっていたウィリスの存在を知っていたと明かし、今大会のおとぎ話の一つとして称賛している。
「ああ、知っていたし、組み合わせ表で同じ山に入っているのも確認していた。このスポーツで長く語り継がれる最高の話題の一つだね」と話したフェデラーは、「こういう話題が必要なんだ。素晴らしいことだと思う。彼と対戦することをとても楽しみにしている。そう何度もあることではないからね」と語った。
ウィリスのような無名の選手と対戦することはめったにないフェデラーだが、がむしゃらにサーブやボレーを繰り出す彼の闘志には敬服しているという。
「これほど低いランキングの相手とプレーしたことがあるかは分からない。主催者推薦(ワイルドカード)の選手と対戦することはあるけれど、そういう選手は普通コーチの仕事はせず、本当のプロを目指すものだ」
「こういうカードは、このレベルの大会では初めてのことだろう。違った試合になるし、士気も高まる」
「彼の話題はとてもクールだから、話を聞いた人々が彼を応援したくなるのは当然だ。難しい試合になるだろうし、彼も好調だから思い通りのプレーができなかったり、浮足立ったりすることはないだろう」
「すごく面白い試合になる。それに彼のサーブやボレーはすごく気に入っているんだ。素晴らしいショットを打っていた。彼の戦いぶりは今のコンディションと完全に適応している」
試合に出場するたびに観客から崇拝を受けているフェデラーだが、当日の試合で賛辞を贈られるのにふさわしいのはウィリスだと確信しており、「彼が声援を受ければ素晴らしいことだ。彼には最高のプレーを期待しているし、自分も素晴らしい試合をして、みんなが楽しめるものにしたい」と話している。
「もちろん、彼にとってウィンブルドンは毎週続くものではないが、その後のことは気にしないことだ。彼には全力を尽くして楽しんでもらいたい。エキサイトしたときの彼の姿はクールだったよ。快進撃が続いているときはそういうものだ」
(c)AFP/Steven GRIFFITHS