【6月22日 AFP】スウェーデンの森に生息するヒグマの母熊は、あえてハンターが住む村や町の近くで子どもを育て、残忍な雄から子熊を守っているとする研究論文が21日、発表された。論文は、母熊が危険を承知で人を盾に子育てをしていると説明している。

 論文によると、研究者らは、若い母熊の一部に発情期にだけ人の近くに移動する個体を確認したという。発情期の雄のヒグマは、性衝動にかられて子熊を殺すことがある。

 英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に発表の研究論文の共同執筆者で、ノルウェー生命科学大学(Norwegian University of Life Sciences)のサム・ステイエルト(Sam Steyaert)氏は、「多くの場合、クマは人に近い地域を避ける」と指摘する。そして、発情期が終わると、子連れの母熊の行動は変化し、猟期にクマを追う人を避けるように森の奥深くへと移動すると続けた。

 雄のヒグマは、雌の性的受容性を促すために子熊を殺す。子熊が一人前になって離れるまで、母熊が発情しないためだ。

 雄のヒグマによる子殺しは一般的にみられる事象で、スウェーデンの森では毎年、子熊の約3割が発情期となる5月初めから7月半ばまでの期間に雄によって殺されるという。

 ステイエルト氏のチームはGPS(全地球測位システム)技術を使用し、2005年から2012年の間に26頭の母熊を追跡した。期間中、16頭が子育てに成功し、10頭は失敗した。

 AFPの取材にステイエルト氏は、「子育てに成功した雌のヒグマと人の居住地との間の平均距離は約780メートルだった」としながら、一方で子育てに失敗した個体では同1210メートルだったことを明らかにした。両者の間に大きな差があることが確認できた。

「子育てに成功した母熊は、人を防護目的で利用したようだが、不成功の母熊は逆に人を避けた」と同研究は結論付けている。(c)AFP