【6月17日 AFP】英イングランド(England)北部バーストール(Birstall)の路上で16日昼ごろ、野党・労働党の女性議員、ジョー・コックス(Jo Cox)氏(41)が銃と刃物を持った男に襲われ死亡した。事件を受け国内には衝撃が広がり、ちょうど1週間後の23日に予定されている欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票に向け離脱派・残留派双方が展開している運動にも混乱が生じている。

 地元メディアが目撃者の話として伝えたところによると、EUへの残留を訴えていたコックス議員は、銃で撃たれた上に刃物で刺され、血を流して路上に倒れていたという。警察が後に同議員の死亡を発表。警察当局によると、52歳の男が逮捕され、現場から拳銃が回収されたという。

 現地メディアは逮捕された男を、地元に住むトミー・メア(Tommy Mair)容疑者と伝えている。目撃者のカフェ経営者が英通信社プレス・アソシエーション(PA)に語ったところによると、犯人はコックス議員を撃つ前と後に「英国を最優先にしろ」と繰り返し叫んでいたという。

 援助団体の元職員で2児の母であるコックス議員は、昨年の総選挙で初当選したばかりだったが、政府のシリア難民支援強化や英国のEU残留を訴えてすでに頭角を現していた。

 事件後、EU残留派の「リメイン(Remain)」陣営は16・17日の運動を中止すると発表。一方ライバルである離脱派の「ボート・リーブ(Vote Leave)」の広報担当も、運動用車両が本部に戻ってきていると述べた。

 デービッド・キャメロン(David Cameron)首相は同日、EU残留運動の一環として、実現すれば歴史的ながら論争の的ともなる英領ジブラルタル(Gibraltar)への訪問を予定していたが、急きょ中止した。

 EU離脱の是非を問う国民投票をめぐっては、最新の世論調査2件で、離脱支持者が残留支持者を上回ったとの結果が出ている。もしこれが実際に国民投票の結果として表れれば、英国は60年近く続いてきたEUから離脱する初めての国となる。(c)AFP/Alice RITCHIE