ガボン唯一の精神科病院、患者を「動物扱い」
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【6月14日 AFP】建物は老朽化し、芝は荒れ放題、患者は雑草の中で放置されている──。ここは、アフリカ中部ガボン唯一の精神科病院だ。
1982年、首都リーブルビル(Libreville)郊外に設置されたこの施設は当初、近代精神医療が始まって間もないアフリカ大陸でモデルとなるはずだった。だが現在は、病院というよりむしろお化け屋敷さながらだ。開け放たれた門には、国立メレン精神衛生センター(CNSM)という看板が掲げられている。
施設も患者も放置されている。数十人いる患者のうち24人は長期入院者で、もはや「住人」と化している。人口約180万人のこの国に、有資格の精神科医は4人しかいない。
センターには患者の世話役として、事務職員数人と調理師3人が雇用されているが、その仕事は、台所から運んできた食事を頑丈な鉄格子の間から差し込むだけだ。
薄汚れた廊下にはごみが山を成し、診療記録は他の事務書類に紛れて散乱している。ひげを生やし、ぼろを着た男性は、「われわれは動物扱いされている」と言い、よろめきながら部屋へと戻って行った。
■「皆見放されて死んでいく」
ケニアに拠点を置くアフリカ健康開発研究所(AIHD)のメアリー・アムユンズニャモンゴ(Mary Amuyunzu-Nyamongo)事務局長は、2013年に発表した報告書で、アフリカでは精神障害を不名誉とするきらいがあると指摘している。
「ウガンダで行った調査によると、『うつ』という用語が文化的に受け入れられていない。またナイジェリアでは、精神障害があるとみられる人々に対し、恐怖や忌避、怒りといった感情が向けられる」と報告書にはある。
アフリカの大部分では、心理的外傷の度合いが深刻な紛争地帯を中心に、保護の名目の下、当局によって精神障害者らが隔離されている。中には、何年も鎖につながれているケースもあるという。
今年の総選挙を視野に、貧困地区の若者を代表して昨年結成された「Rally of Young Gabonese Patriots(ガボン若き愛国者連合)」を率いるガエル・クンバ・アユネ(Gael Koumba Ayoune)氏は、「皆見放されて死んでいく」と声を上げる。4月には、患者の一人が床でもがき苦しみながら死去したが、誰一人手を差し伸べなかったという。
同連合は、センターの正面に高齢者医療施設を建設している。「国はもはや、国民の最も基本的なニーズにさえ応えていない…精神的に正常ではないだとか、老い先短いとみなされた患者は、もう人間とすら認めてもらえない」と現状を批判した。
世界保健機関(WHO)によれば、サハラ以南アフリカで疾病の5%を精神疾患が占めているにもかかわらず、ガボンの医療予算のうち精神医療に充てられているのは1%に満たないという。(c)AFP/Célia LEBUR