【6月10日 AFP】一般市民が利用できる映画館や劇場がなく、表現の自由の欠如が批判されているサウジアラビアで、芸術やメディア産業の開発が計画されている。保守的な王国だとする否定的な固定観念を払拭(ふっしょく)するのが、その目的だという。

 この取り組みは、原油に依存する同国経済の多様化を図るため、今後5年間に幅広い分野で行われる「国家変革計画(NTP)」の一環。アデル・トゥライフィ(Adel al-Turaifi)文化情報相は7日、これには「社会を変革する意図もある」と述べた。

 サウジアラビアではこれまで、私的な映画の上映や小規模な美術展は行われてきたが、人を描いた絵画の禁止や音楽に対する否定的な態度が同国の基盤となっている点が考慮されてきた。

 しかしNTPの下、「ロイヤルアート・コンプレックス(Royal Arts Complex)」や「メディア・シティー(Media City)」などの開発が行われる予定だ。

 トゥライフィ氏によると、サウジの一部アーティストやパフォーマーらは、海外で展示を行い人気を集めてきたものの、こうした人々を支えるための社会基盤や空間が国内に存在しなかった。

 他省の大臣らと共に記者会見を行った同氏は、こうした状況は、「サウジアラビアのイメージを世界に伝える一助となりうる」アート・コンプレックスによって変わるだろうと述べた。

 メディア・シティーについても同様に、同国の若者らの製作技術を高め、これまで「非常に限定的」だった地元コンテンツを生み出せるとしている。

 隣国アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ(Dubai)には、15年前から非課税のメディア・シティーが設置されており、サウジ資本の衛星テレビ局アルアラビーヤ(Al-Arabiya)を含む地域メディアや国際メディア2000社以上が入居している。

 NTPは2020年までに、メディアやそれに関連する雇用を現在の1万件から1万6100件に伸ばすことを目指しているが、主要な目標は、同国のイメージを改善し、文化を促進することだとトゥライフィ氏は述べている。(c)AFP/Ian Timberlake