【6月9日 AFP】ドイツ公共放送連盟(ARD)は8日、ロシアが同国の陸上競技選手に対する資格停止処分を科されているにもかかわらず、「国家ぐるみのドーピング」を継続していると報じた。

 AFPが先行視聴した同日放送予定のドキュメンタリー番組は、ロシア側がドーピング問題で不祥事を起こしたコーチたちをかばっていると伝えた。また、同国のビタリー・ムトコ(Vitaly Mutko)スポーツ相も隠蔽(いんぺい)工作に関与していると、ARDの調査は名指しで指摘している。

 8月に開催されるリオデジャネイロ五輪へのロシア選手の出場可否について、国際陸上連盟(IAAF)が17日に判断を下す予定が迫る中、この番組が放送された。

「ドーピングの知られざる世界――崖っぷちのロシア」と題された番組は、元競歩チームのコーチであるビクトル・チェギン(Viktor Chegin)氏がドーピングで永久追放処分となったにもかかわらず、現在も代表選手の指導を行っている映像を放映した。

 指導を受けている選手の中には、ドーピングにより3月に五輪のメダルを剥奪されたオリガ・カニスキナ(Olga Kaniskina)やセルゲイ・キルジャプキン(Sergey Kirdyapkin)が含まれていた。

 ARDはまた、モスクワ反ドーピングセンター(Antidoping Centre Moscow)の元所長で、現在は米国に身を潜めているグリゴリー・ロドチェンコフ(Grigory Rodchenkov)氏の書類を基に、露スポーツ省の顧問が、露反ドーピング機関(RUSADA)の日々の業務を継続的に干渉していたと伝えた。

 さらに番組は、サッカー、ロシア・プレミアリーグのクバン・クラスノダール(Kuban Krasnodar)に所属する選手の陽性反応の結果に関し、反ドーピングセンターとスポーツ省の間で交わされた2014年8月の電子メールのやりとりについて伝えた。結果の公表を前に「VLの判断を待つ」べきかという反ドーピングセンターの質問に対するスポーツ省の答えは、「イエス」だった。

 ARDによると、「VL」はビタリー・レオンチェビチ・ムトコ(Vitaly Leontyevitch Mutko)のイニシャルを意味するという。(c)AFP