謎の原人ホビットの「祖先」発見 進化過程の解明に前進
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【6月9日 AFP】インドネシアのフローレス(Flores)島で化石が見つかった70万年前の小型人類は、同島にかつて生息していた「ホビット」と呼ばれる謎の原始人類のほぼ確実な祖先であるとする研究結果が8日、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。
同誌に発表された2件の研究論文は、約5万年前に絶滅した小型人類「ホビット」ことホモ・フロレシエンシス(Homo floresiensis、フローレス原人)の進化過程についての知識の膨大な空白部分を埋めるものだ。
見つかったのは大人1人と子ども2人の歯を含む化石。この発見により、ホビットの祖先はおそらく約100万年前にフローレス島に到達した、より体の大きな別種の人類だったとの仮説が裏付けられた。
この仮説では、直立歩行して道具を使っていたこの人類の体が世代を重ねるごとに小さくなり、元の体重と身長のほぼ半分になったとされる。
この「島しょ矮化」と呼ばれる現象はこれまでに動物で確認されており、中には資源が限られた環境に適応するため体が6分の1まで縮小した種もある。実際にフローレス島にはかつて、ゾウに似た「ステゴドン」と呼ばれる動物の小型種が生息していた。この種は小型人類によって絶滅に追いやられたともされる。
新たな化石は2014年、フローレス島中部で発見された。発掘現場は2003年にホビットの化石が見つかった場所から約100キロの地点だった。
この発見は、海面上昇によって島へと変化した陸地で人類が小型化したことを示す初の有力な証拠となった。
ホビットについては、現生人類のホモ・サピエンス(Homo sapiens)が病気や遺伝子異常で体が縮小したものだという説も出ていたが、研究チームは今回の発見によってこの説は否定されたと指摘している。
オーストラリア・クイーンズランド(Queensland)州のグリフス大学(Griffith University)の考古学者アダム・ブラム(Adam Brumm)氏は「ホビットは本物だった。われわれとは違う、現在地球上に存在しない古代の人類種だった」と語る。
ブラム氏によると、ホビットの起源をめぐっては2つのシナリオが想定できる。
うち一つは、ジャワ(Java)島に生息していたホモ・エレクトゥス(Homo erectus)が矮小化したという説だ。ホモ・エレクトゥスはアフリカを出た最初の人類とされ、成長時の身長は最大で180センチ、体重は70キロだった。
ジャワ島では19世紀後半、インドネシアの島々が陸続きだった約120万年前のものとされるホモ・エレクトゥスの化石が見つかっている。
ブラム氏によると、歯に見られる共通点から、フローレス島の人類の祖先はホモ・エレクトゥスだった可能性が最も高いという。
もう一つの説は、さらに時代が古く小さな骨を持つアフリカ起源のヒト亜科が、ホビットへと進化したというものだ。(c)AFP/Marlowe HOOD