アリ氏の故郷ルイビル、町中に広がる喪失感
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【6月5日 AFP】(写真追加)ある人は父親のような存在を失ったと語る。級友は、「預言者」の氏を嘆いた。米ケンタッキー(Kentucky)州ルイビル(Louisville)にあるモハメド・アリ(Muhammad Ali)氏の生家には4日、「偉大な人」に敬意を表するため友人やファンらが訪れた。
アリ氏が生まれ育ち、ボクシングを始めたルイビル市内、グランドアベニュー(Grand Avenue)3302番地にある生家には、多くの花や写真、手紙が手向けられた。
新たにピンク色に塗装された小さな家は現在、3日に74歳でこの世を去った元世界ヘビー級王者をたたえる博物館となっている。
ファンや近隣住民は、アリ氏のリング上での壮大な勝利の数々は、世界のスポーツを超越した同氏のすべてではないと語った。
アリ氏とともに学校に通ったミュージシャンのソニー・フィッシュバック(Sonny Fishback)さん(75)はAFPに対し、「ボクシングは、彼の使命というわけじゃないんだ。彼はそれよりも大きな存在だった」と語った。
当時のカシアス・マーセラス・クレイ・ジュニア(Cassius Marcellus Clay Jr.)少年は、ヘビー級で栄華を極めたころに比べやせていた。フィッシュバック氏とカシアス少年は、よく学校から一緒に家路に就いた。
フィッシュバック氏は、「彼は『俺はヘビー級王者になるんだ』と言っていた。誰も信じなかったね。当時の黒人は自信を持っていなかった。彼は私たちにメッセージを送ったんだ。君たちは美しいとね」と振り返った。
「彼は予言者だったんだよ」
アリ氏の死を全世界が悲しんでいるが、過去の人種差別を記憶している住民が多いルイビルでは、町中に喪失感が広がっている。
アリ氏の生家を改装して作られた博物館の館長は、現地時間の午前2時頃に人々がやってき始めたと明かした。
トニー・ウィックウェア(Tony Wickware)さん(63)は、17歳の息子と博物館を訪れた。ウィックウェアさんはAFPの取材に「ニュースを聞いて、びっくりして、その後は涙した」と応じた。
「一晩中泣いたね。つらい。彼は私の父親のような存在だったから」
(c)AFP