【6月3日 AFP】アーサー・ブラウン(Arthur Brown)君(16)は、米イリノイ(Illinois)州シカゴ(Chicago)郊外にある高校で間もなく2年生を終えようとしている。友達は夏休みを地元ショッピングモールで過ごすことを楽しみにしているが、ブラウン君は、自分がそうした典型的な米国のティーンエージャーの生活を送ろうとすると、いろいろと複雑な問題が生じることを分かっている。

「いつ外に出かけるか計算し、公共の場ではどうかトイレにいかなくて済むように、と祈るんです」

 ブラウン君は、女性として生まれたが今は自分を男性だと認識しているトランスジェンダー(性別越境者)だ。

 自分の性別に違和感を持つトランスジェンダーの人々はこれまで、公共の場で自由にトイレを利用できない問題に対処すべくさまざまな策をとってきた。だがこの問題はここにきて、基本的権利をめぐる議論へと発展している。米国では、ノースカロライナ(North Carolina)州などで「トイレ論争」が沸騰する前から、多くの公立学校でこうした議論、そしてトランスジェンダーの生徒らへの対応が進められてきた。

 公共の場で男女の指定があるトイレを使わないようにするため、トランスジェンダーの人々はさまざまな対処法を身につけてきた。例えば、トイレが近くならないように公共の場で飲食をしないとか、一人で入れるトイレの場所を把握しておく、といったようなことだ。

 しかし、いずれも理想的な解決法とは言えない。

 シカゴにあるルーリー小児病院(Lurie Children's Hospital)で性発達プログラムのプログラムマネジャーを務めるジェニファー・レイニンガー(Jennifer Leininger)氏によると、トランスジェンダーの子どもや若者は、膀胱や尿管の感染症、摂食障害などになる確率が非常に高い。

 ブラウン君のショッピングモールでの対処法は、「家族向け」のトイレを利用することだ。だがそれでも「家族用トイレを使っていることを理由に罵倒してくる人たちもいた」という。