【6月2日 AFP】今年3月までイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に支配されていたシリアの古代都市パルミラ(Palmyra)で、ここを奪還したシリア政府軍もISと同様に略奪行為を行っているとして、ドイツの著名文化遺産専門家が1日、非難した。

 プロイセン文化財団(Prussian Cultural Heritage Foundation)理事長で考古学者のヘルマン・パーツィンガー(Hermann Parzinger)氏が、このほどメディアに明らかにしたところよると、国連教育科学文化機関(UNESC、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)であるパルミラでは、政府軍の兵士らが「違法な発掘」や「略奪」を行っているという。非番の兵士らによる行為とされた。

 ロシア軍空爆支援などを受けたシリア政府軍は今年3月、ISからパルミラを奪還することに成功した。かつては貿易の中心地として栄え、内戦前は主要な観光地だったシリア中部のパルミラでは、IS戦闘員らによる古代ローマ式円形劇場での「集団処刑」や古代寺院の爆破、遺物の略奪などが行われていた。

 パーツィンガー氏は、独日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ(Frankfurter Allgemeine Zeitung)への寄稿でも、パルミラの奪還は「文化的には重要な勝利」だが、「この勝利をもってしても、アサド大統領とその支持者らは文化遺産の救世主にはなっていない」と述べていた。

 シリアの世界遺産保護を目的とする国際会議が2日、ドイツ政府とユネスコの主催で行われる。会議には科学者や考古学者、プランナーなど170人以上が出席する予定。5年以上続くシリア内戦では、これまでに27万人以上が死亡している。(c)AFP