【5月30日 AFP】ドイツの右派ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の幹部が、サッカードイツ代表で、ガーナにルーツを持つジェローム・ボアテング(Jerome Boateng)に対する人種差別的な発言を行ったとして、ドイツ国内で批判が巻き起こっている。これを受けてAfDは29日、謝罪を行った。

 発端は、フランクフルター・アルゲマイネ日曜版(FAS)に掲載されたAfDのアレクサンダー・ガウラント(Alexander Gauland)副代表(75)の発言だった。同氏はFASに対して、「ボアテングがいいサッカー選手なのはみんな知っているが、誰も彼の隣で暮らしたいとは思わない」と話していた。

 この言葉が、ドイツ国内で大きな批判の的となった。ガーナ人の父親を持つボアテングは、ベルリン(Berlin)で生まれ育っている。

 そのためAfDは、批判を鎮静化しようと大部数の国内紙ビルト(Bild)に声明を掲載し、フラウケ・ペトリー(Frauke Petry)代表が、「本人は言ったかどうか覚えていないと述べていますが、それとは別に、与えた印象についてボアテング氏に謝罪いたします」とわびた。

 ガウラント氏は、「FASが示唆しているような、ボアテング氏を侮辱する言葉は決して口にしていない。私は彼を知らないし、それゆえ彼の人間性を否定するなど思いもよらない」と発言を否定している。しかし、25日にポツダム(Potsdam)で取材を行ったFASは、録音記録が残っていると話している。

 サッカー界からは、ガウラント氏にオフサイドを宣告する声が上がっている。

 ドイツ代表でチームマネジャーを務めるオリバー・ビアホフ(Oliver Bierhoff)氏は、「われわれがこうした発言の対象になるのは、これが初めてではない。余計なコメントだった。こういうことを言う人たちは、自分で自分の首を絞めているだけだ」と話した。

 また、W杯ブラジル大会(2014 World Cup)でボアテングとともに最終ラインを形成し、優勝を勝ち取ったベネディクト・ヘベデス(Benedikt Hoewedes)は、自身とボアテングが一緒に写っている写真をツイッター(Twitter)に投稿し、「ドイツ代表にタイトルを取ってほしいのなら、隣に彼のような人物が必要だ」とコメントを添えている。(c)AFP