【5月24日 AFP】ジョン・ジャネット・ソールスタ・レモ（John Jeanette Solstad Remo）さん（67）は、ソ連軍を追跡するノルウェー海軍の潜水艦で艦長を務めていた冷戦（Cold War）当時、機密書類用のロッカーにドレスを隠し持っていた。

　そんなレモさんも間もなく、本当の自分として、つまり「男性の体で生まれた女性」として認められる見込みだ。ノルウェーではこのたび、活動家らから世界でもまれに見る進歩的な内容と称賛されている法案が、議会に提出された。成立すれば、性別適合手術などを受けていなくても法的な性別を変更できるようになる。

　同国では1970年代以降、性別変更の要件として、侮辱的な精神鑑定や、長期にわたるホルモン治療、生殖能力を永久に奪う手術が必須とされていた。法案が可決されれば、これら全てが不要になり、役場への届け出（ウェブサイト上でクリックするだけで可能）さえすれば性別を正式に変更できるようになる。法案に反対する声はほぼ上がっていなく、活動家らは、議会が夏季休暇に入る前の採決を期待している。

　レモさんは、過去のいばらの道を振り返る。4歳で女の子用の服を着た時の喜びは、すぐに母親の逆鱗へとつながった。10代になると、他の子どもらに真実を暴露され、自殺を考えるようになった。海軍学校や潜水艦部隊の男性的な世界では、本当の自分を隠し、周りに合わせようと努力していた。

「寄港すると、ホテルに泊まることが多かった。私はワインを1本買ってきて、テレビを見ながら自分の部屋にこもっていた。女装をしてね。そうしなければ、やっていけなかった」

　性別適合手術は受けていない。1度目の結婚は、地下室に隠していた女性服を妻が偶然見つけたことをきっかけに破綻。その後再婚したが、今度の相手はありのままの自分を受け入れてくれる女性だった。