【5月24日 AFP】地球上の生命は、若年期の太陽で次々と起きた強力な爆発現象(フレア)の放射が絶えず降り注いだことによって発生した──。23日に発表の研究論文がこのような可能性を示唆した。この太陽フレアのエネルギーは、原子爆弾1000兆個分の爆発力に匹敵するという。

 約40億年前、地球とその主星である太陽の温度は初期よりも大幅に下がっていたが、地球が生命に適した環境になるまでの過程は、この太陽の激しい現象で説明できる。研究チームは英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)」に発表した研究論文に記している。

 研究チームによると、当時の太陽光の強さは現在の約3分の1ほどだったが、その活動は今よりはるかに激しかった可能性が高いという。繰り返し起きる巨大な太陽フレアによって、地球大気中の窒素分子(N2)が分解され、亜酸化窒素(N2O、笑気ガス)とシアン化水素(HCN)が生成されたことが考えられる。亜酸化窒素は、地球の温度を上昇させる温室効果ガスとなり、シアン化水素からは、タンパク質の構成単位であるアミノ酸がつくられる。

 窒素は、すべての生命に必須の元素だが、初期の地球大気中に存在したと考えられる窒素分子の形態では化学的に不活性であり、より反応性が高い形に変換する必要がある。この変換は、非常に高い温度で達成される。

 今回の研究は、誕生から数億年後の太陽に似た他の恒星の望遠鏡による観測と初期地球大気の化学的性質のモデルに基づくものだ。

 論文の共同執筆者、ウラジーミル・アイラペチャン(Vladimir Airapetian)氏は、太陽の熱を捕捉するための効率の高い温室効果ガスがなければ「40億年前の地球は、生命を支える温暖湿潤な惑星ではなく、地表全体が凍結した雪球になっていただろう」と説明する。

 今回の最新モデルは「現在のところ未解決の『暗い太陽のパラドックス(全球凍結の形跡がないこと)』を(当時の)地球の下層大気中で亜酸化窒素が効率的に生成されたことによって解決する」ものだ。

 アイラペチャン氏は、AFPの取材に応じた電子メールで「生命の生体分子を生成するために必要不可欠となる、この『宇宙の』要素を、われわれのモデルは説明している」と述べている。

 今回のモデルでは、地球と同様に主星からの激しい放射にさらされた他の惑星でも、同じ結果がもたらされた可能性があると示唆された。

 米カール・セーガン研究所(Carl Sagan Institute)の惑星科学者、ラムセス・ラミレス(Ramses Ramirez)氏は、今回の研究の解説記事の中で「同時期の火星も、パラドックス的に温暖湿潤だったことが、地質学的証拠によって示唆されている」ことを指摘している。

 地球と同様に、火星でも、太陽と大気の相互作用がみられた可能性がある。(c)AFP