【5月31日 AFP】長い間、息子にぴったりな花嫁を探していたラム・キショレ(Ram Kishore)さん(60)の努力がようやく実ったのは、自分が暮らすインド北部の村に電気が通ったことがきっかけだった。

 首都ニューデリー(New Delhi)から230キロ離れたここアナンドプール(Anandpur)村には、これまで電気が通っていなかった。だが今年、初めて高圧線用の鉄塔が設置され、村に電気が通ったおかげで、キショレさんはようやく花嫁の両親に息子との結婚を認めさせることができたのだ。

 キショレさんは、1部屋しかない自宅を照らす電球の下に座り、笑顔を見せながらAFPの取材に「息子の嫁の家族を自宅に招待して、電気計器を見せるつもりだ」と語った。

 昨年公表の政府統計によると、インドでは3億人が電気のない暮らしを送っていた。だが政府は昨年8月、1万8000以上の村々を送電線網に組み入れる計画を発表。これまでに7700以上の村で電気が開通した。

 人口120人のアナンドプール村の村人の受け取り方はさまざまだ。暗くなってからも屋内で料理ができると楽しみにしている女性もいれば、これまで太陽電池でしか充電できなかった携帯電話が毎日使えるようになると語る若者も。

 村の子どもたちの大半は学校に通ったことがなく、読み書きができないが、電気のおかげで日没後も遊び続けられることを喜んでおり、父親にテレビをおねだりしようと言う子どももいる。

 電気計器の設置は無料だが、村の全25世帯のうち7世帯は、100~200円程度の電気代を払えるかわからないため自宅に電気を通さないままでいる。(c)AFP/Bhuvan BAGGA