【5月17日 AFP】南シナ海(South China Sea)で今月、乗っていたボートが転覆して遭難した観光客ら4人が、10日間にわたり海上を漂流した末、通りがかりの船によって無事保護される出来事があった。生存者の一人は16日、AFPの取材に対し、救助される機会を何度も逃しつつ、生魚を食べ、結露によってできた水滴を飲んで生き延びたと語った。

 香港(Hong Kong)出身のリゾート経営者、トミー・ラム・ワイ・イン(Tommy Lam Wai Yin)さん(44)は今月2日、インターンのマレーシア人女性とスペイン人観光客の男女を連れてボルネオ(Borneo)島沖の島めぐりツアーに出た際、突然の高波でモーターボートが転覆し、遭難した。

 サバ(Sabah)州の州都コタキナバル(Kota Kinabalu)から電話インタビューに応じたラムさんによると、ボートを表向きに戻すことはできたものの、飲み水や懐中電灯はなくなり、携帯電話は壊れていた。

 食料は携行しておらず、漂流している間、4人はボートに飛び込んでくるトビウオなどの魚を生のまま食べていたという。「サシミはもうずっと食べたくないよ」とラムさんは冗談交じりに語った。

 飲み水は、客のスペイン人男性が映画で見た方法で、太陽光にさらした海水入りプラスチック袋の表面に生じさせた水滴をなめていたという。

 4人の苦難はもしかすると1日だけで終わるかもしれなかった。研修生の女性の電話だけは、プラスチック製袋に入っていたために壊れていなかったのだ。だが、それに気付いたときには後の祭りだった。

 マレーシア海軍や沿岸救助隊は捜索を開始したが、ボルネオ島周辺ではなく、もっと北の南沙諸島(英語名:スプラトリー諸島、Spratly Islands)に近い海域を捜索していた。